SとかMとかわりと真剣味に欠ける談義
「こっ!!こんな差汚いっスよォーーー!!」
「ジャックがんばれ、人生なんてそんなモンだ」
「お前は何の悟りを開いている」
叫ぶジャックに頷く俺、隣でジト目を向けるアルヴィス。
うんまあ、いつも通りのことだ。
スコップ片手に引き攣った顔で、ジャックが巨大なオノを迎え撃つ。見た目から何から、とてもじゃないが不平等さが半端じゃない。すげぇな、あの相手。
キャンディスとか言ったっけ、と首をひねる俺の横、アルヴィスが息を吐いた。
「石使いか」
「厄介だねぇ」
「お前の幻覚よりはマシだ」
それ褒め言葉だよなアルヴィス?と、へらり笑った俺の前で、ジャックのアースウェイブが炸裂する。砂漠を切り裂き迫るそれの威力に、俺はやるじゃんジャック、と口笛を吹いた。
だが。
「義眼?!」
「あの右目……マジックストーンだ!!」
「嘘だろマジか」
ナナシが息を呑み、珍しくアルヴィスも焦った表情を見せて叫ぶ。俺も思わず声を漏らしていた。
と、不意にジャックと相手の体が光る。まばたきをした次の瞬間、2人の場所は入れ替わっていた。
「アレ?……のぎゃあーーーっ?!!」
「クスクス……おバカな子。」
吹っ飛ぶジャック。サドスティックに微笑む相手。
うん、なんていうかアレだな。ちょっと登場した時から思ってたんだけど、恰好から立ち振る舞いから、多分彼女は稀に見る、ドを通り越した超弩級なドSなんだろう。
あ、自分でもアホなこと言ってる自信は一応ある。ちなみに俺はアルヴィス相手ならSだろうとなんだろうと、
「13トーテムロッド」
「はっ?!今俺声に出てたか?!」
「なんとなく、嫌な悪寒がした」
ギロリ、物騒な目付きで俺の喉元にロッドを押し当てるアルヴィス。わお、さすが。
そんなバカやってる俺達(俺だけか)横目に、「男を見せるんだろ?!弱気になるなよジャック!!」「了解ーィ!!」と、いつの間にか繰り広げられている熱い友情。
なんか申し訳なくなってきた。ゴメン、薄汚れたことしか考えられない不純な大人で。
「元気だけはあるのォ」
「それが勝利につながるとは限らない」
「なんじゃお前ら、クールじゃのぉ」
前言撤回、
やっぱ大人って大体現実主義で不純なもんだった。
△▼
ここで大朗報:
なんとキャンディスは超弩級ドSでもあり超弩級ドM
物凄くどうでもいいけど、それだけは伝えておきたい。
というかやばい、驚きすぎて名前憶えてしまった。うわお。
俺が本当にどうでもいいことを考えている前、自らを傷付け血を流し、うっすら笑うキャンディスが囁く。
「私はサディストでありマゾヒスト……ゴーゴンを出す時は、いつも相手に好きに嬲られるの」
朗報補足:公式的に認められるSM設定
やっぱり凄くくだらないことを真顔で考える俺の横、ギンタが焦燥に満ちた声で叫ぶ。
「ジャックが石になっても、アリスで元に戻せないのか?!」
「難しいな。あれはダークネスではないし、何より能力が強い!」
さすがアルヴィス。よくわかってる。
俺はじっと、キャンディスの頭に光るアームを見据えた。ふと、そこで顔をしかめる。
視線をスライドさせれば、ばっちり目が合う黄色の瞳。
イラッとして目を細める。相手はどこか皮肉っぽく、くっと口の端を歪めた。
何と言いたいかは、言葉がなくともよくわかる。
――彼、死んじゃうね。
チッと舌打ちをする。それから、俺はジャックに目を戻した。
ピキピキと、不穏な音を立てジャックの体は石化していく。間違いない、どうしようもないほど確実に。少しずつ、じわじわと。
「ジャックーーーっ!!!」
ギンタの絶叫が響く。俺は思わず唇を噛んで、顔を背けた。
その瞬間、不意にアルヴィスが俺の肩を掴んだ。そのまま、手荒く揺さぶられる。
「は、アルヴィス、何……」
「見ろ」
青い瞳が、信じられないという色に染まっていた。
ただし、それは恐怖や絶望ではなく――歓喜で。
「――メフィトス!!」