夢の世界に溺れる | ナノ
次々進むその先は
 朗報:俺のどうしようもない無茶振りは、わりときっちり叶えられました。


「それではまたお会いしましょう。スノウ姫」

 ポン、という可愛らしい音とともに、元の指輪へと戻るウンディーネ。
 普通に可愛い。さっきまで色々と胸焼けしそうな眺めばかり見ていたせいか、なんか心がほっこりする。俺もああいう癒し系アーム、ひとつぐらい持っとけばよかったな。

「……何を考えてるんだ、お前は」
「え?いや、アルヴィスがデフォルメ化したアームとかきっと可愛いよな、って」

 信じられないものを見るような目付きが来た。
 うんゴメン。

「それでは、第二戦!」

 ポズンが声を張り上げる。砂漠フィールドを荒れた風が渡り、砂ぼこりが巻き上がった。

「出てくる戦士は?!」

 音もなく、マントと三角帽子を被った人影が進み出た。


△▼




「ギンタとナナシ、シーは決まってるからな」

 アルヴィスの言葉に、ああそうだったと思い出す。ギンタはあのよくわかんないドクロ頭と、んでナナシのは最後に来るんだっけ。
 ふと、フィールドの向こうに目を向けた。途端、金髪少女と目が合い、クスッとウインクされる。
 ゾクッとした。疼いたチョーカーを右手で握り、思わず目を逸らす。

 なんだろうか。あの少女、すごく嫌な感じがする。いや、ロリっぽいからとかそういうことは関係なしに。

「じゃっ、オイラ……」
「オレが行く」

 ジャックを遮り、アルヴィスがすっと進み出た。やっば、カッコいい。

「シーは黙っていろ」

 鉄拳を食らい、俺はお前も男なら1回くらいナイトと当たっとけうんぬんとジャックに言い聞かすアルヴィスから、泣く泣く離れてぶすくれる。
 いや別に、そのノリを期待してないわけじゃないけど、でももうちょい手加減してくれてもいいと思うんだよ。鉄拳受ける俺側としては。

「……シー」
「ん?」

 ふと、顔を上げればスノウ姫。しゃがみ込み、「の」の字を地面に書き付けるしょんぼりポーズを取っていた俺を見下ろし、スノウ姫はにこっと笑顔を見せた。

「私、勝ったよ」

 眩しいほどに明るく言われて、一瞬固まる。
 それから、ああ、と俺は笑った。

「うん。おめでと、スノウ姫」

 ブイ、とちょきの形にした右手を差し出す。ぱっと顔を輝かせて、スノウ姫は俺と同じく、Vの字にした手を差し出して、ちょん、と俺の指先に合わせてきた。
 顔を見合わせ、ほぼ同時に吹き出す。いやよくわかんないけど、なんかおかしくて仕方なかった。

「……わかった、やるっス!」

 ジャックの力強い声に、俺とスノウ姫は同時に振り返る。
 俺達の視線の先、なんかちょっと怪しい顔で、ぽわわんと花を飛ばすジャックの様子。

「……スノウ姫」
「……うん。ジャック……」

 変な事、考えてないといいけど。
 目と目を合わせ、俺達は心中が同じなのを互いに察した。


△▼




「チェスの兵隊、ハメルン!」
「メル、アルヴィス!」

 ポズンの宣言とともに、両者が砂漠の真ん中で向かい合う。
 あれ、そういやアルヴィスって、いつから肩書きクロスガードじゃなくメルになったんだっけ。まあいいか。
 どうでもいいことで一瞬考え込んだ俺を置いて、アルヴィスが颯爽とロッドを構える。


 さて、アルヴィスの勇姿でも見守りますか。


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