歩み来る残虐の足取り
「俺、ナナシと闘う時は幻覚で女装するわ」
「何言っとんのやシーちゃん! そないなことしたら全力でナンパしてしまうで!!」
いやもちろん、冗談なんだけど。
無事4thバトルをドローで帰ってきたナナシに、でも批難の目を向ける人間は1人もいない。
当然っちゃ当然だろう、アクアに情けをかけて帰ってきたんだし。甘いなあとは思うけど、それはあくまで俺の個人的な感想だ。
「やるじゃねーかよナナシーっ! オレ見直した!」
「意外と紳士ではないか!」
「いやーんもっと言ってぇー」
くねくねとポーズをとるナナシ。うわきもい。
「こいつがー女のコとやるナナシ流『それなりの戦い方』ですわ。」
真顔で宣言したナナシが一転、こっちへ向き直りきゃはっと笑う。
「アルちゃんとシーちゃんも勉強せなアカンよ!」
「なぜオレに言う?」
「よけーなお世話だナンパ野郎」
「なあっ?! な、ナンパ野郎?!」
珍しくがやがや騒いでいた俺は、きっと気が付きたくなかったんだ。
お情けでドローになったアクアが、この後どうなるか、なんて。
だって、俺とラプンツェルが似てるなら――。
「……じゃんけんに勝てば、首切りはナシですもんね?」
「ああ、そうだよ……ジャ〜ン、ケ〜ン、……」
――ダメだ。
呟いていた。
次に、俺の目を塞いでくれる人は――もう、いない。