夢の世界に溺れる | ナノ
女好きはくたばりません
「ナナシーっ!!!」

 ギンタの絶叫が木霊する。
 けど、俺も内心わりとそんな感じだった。
 叫び出すようなキャラじゃないことを重々わきまえてなかったら、うっかり声をあげていたかもしれない。

 ――ロリっ子、お前グリフィンランス弾き忘れてるよ、

 と。


「……ネイチャーアーム『スピカラ』です。これでアクアは海のお友達を呼べるんですよ!」

 本日最大の注目点:ロリっ子の名前はアクア
 
「なっ……ナナシーーっ!!」

 俺がマジメな顔で馬鹿思ってる間に、前でギンタがもう一度叫んだ。喉が枯れそうな大声だ。
 あーあ、何してんだよギンタ。喉痛めたいの?

「ギーンタ」
「! シー?!」
「だーいじょうぶだって」

 俺はひとあしでギンタの横に並ぶと、にっこり笑って腕を伸ばす。そしてぽんぽん、と軽くその肩を叩いてやった。
 そのまま、ワザと大きな声で言ってやる。
「あいつが女にじゃなくてバケモンに殺されて、黙ってるわけ無いからな」

「――シーちゃん、」

 俺の言葉のコンマ数秒後に、目の前の怪物がぱっくり割れた。
 そして――現れる、無傷の男。


「――ギンタも、呼んだ?」


△▼



「ほーら言ったろ?大丈夫だって」
「ナナシ……」

 アクア(ロリっ子より改名)へ悩殺スマイル(大爆笑)を浮かべてグリフィンランスを肩にのせる(ちなみに何喋ってるかと思いきや自分のアームの自慢だった)、そんなナナシを見つめてギンタが息を吐く。

「あの女ったらしがあんな無残な死に方選ばないって」
「ちょいさっきからシーちゃん何言っとんのや?! 自分の悪口かいな?!」
「よくおわかりでー」

 ブンブン、と手を振れば、遠くでポズンが呆れ顔になるのが見えた。ゴメンね、俺わりと空気読まないタイプなんだ。
 余裕しゃくしゃくに手を振り返したナナシの前、反対に余裕なんてまったく失くしたアクアが真っ青になる。のわりに笑顔は崩れないんだから、なかなかあの子も凄いと思う。いや、ロリは苦手だけど。
 ――でも、もう。


「……潮時、やねェ」


 うん、俺もそう思うよ、ナナシ。


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