これが温かさと呼べるなら
俺にはロリコンの気はない。
「でも6年前のアルヴィスは可愛かったよな」
「口をつぐめシー」
ふと蘇った感想を口にしたら、フィールド並みに冷え切った視線が返ってきました。辛いデス。
別に、ちょっとショタコンの気はあるかもっていうのは認めてもいいと思うんだ、って言おうとしてただけだったのに。あ、これもアウトか。
目の前にはふっわふわのロッリロリな格好した女の子相手にめっろめろになってる(?)ナナシの姿。
相手についての俺の説明が絶望的なのは、別に俺が語彙力不足だからってわけじゃない。他に説明しようがないからだ。
「お先にどーぞ。レディーファーストや!」
「うわ馬鹿だ」
これでもかと言わんばかりのナナシの明るい声に、思わず言葉が口をついて出た。
「あの馬鹿……! 前回負けた事全っ然こりてない!」
「もっと言ってやってください! 馬鹿って!」
他のメンバーの評価もなかなか悲惨だったが、まあこれは致し方ないだろう。
やっぱナナシってアホだな、うん。別に俺アホ嫌いじゃないけれど。
「まあ! なんて優しい人なんでしょ!ありがとうございますぅ」
キャッ☆となんか飛び出してきそうな勢いで女の子がニッコリ笑う。やばい、アレ何。俺むり。
「……寒気がする」
「何を今更」
「? 何、シー、あんたああいうのが苦手なの」
「いや……よくわかんないけど、アレとは別の意味で闘いたくない」
「……意外だな」「意外な弱点ね」
顔を上げればそろって中途半端な顔した奴が2人。言うまでもなくアルヴィスとドロシー。
「……笑いたいなら笑えよ。何その顔」
「いや……ここは笑うべきではないなと」
「だね……スノウがぎりぎり許容範囲内ってコト?」
「ノーコメントで」
言いながら俺はフィールドへ顔を向けた。
なんていうか、ドロシーはまだしもアルヴィスが唇を引き攣らせている表情はレアすぎて直視できない。それも怒りとかじゃなく、今にも笑い出しそうな感じで。
うん、なんていうかダメだ。からかわれているのにドロシーに噛み付く気も湧いてこない。
なんなんだろな、と首をひねりつつ敵の白い爆弾(真珠?)を避けるナナシを観戦する。
と、ここで俺の頭にポン、とのる柔らかい物がひとつ。
「……は?」
「ふふふ……ううん、ただ…シーのダメなものが意外すぎてね。かわいいトコあるじゃない」
「……笑いたいんならもういっそ盛大に笑えよ」
半眼で睨みあげれば、なぜか俺の頭に手を置きながら肩を震わすドロシーの姿。
なんなんだこれ。背が高いからってむやみに頭撫でてくるのはどうなんだ。ただでさえ俺は接触って嫌いなのに、女の子に頭撫でられるとか屈辱以外の何ものでもないだろう。
「今度ぜってードロシーが悲鳴あげるような幻覚見せてやる」と我ながらなかなか物騒なことをぶつぶつ言えば、「あらあら、なら私は可愛い女の子のアームで対応しなくちゃね」と真上から返された。
……だから頭から手放せっての。うざ。
そんな俺とドロシーの茶番を、横でアルヴィスがずっと見つめていたことに、俺は当然気が付くはずもなく。
アルヴィスが、ふてくされてそっぽを向く俺の表情をじっと見つめていたなんて、まさか。
そう――ナナシが、魚の化け物に喰われるまで。