夢の世界に溺れる | ナノ
笑える幻覚作用のお話
「いやあぁああー!!何よコレー?!!」

 叫びだした女の子には申し訳ないが、俺は思いっきり吹き出した。
 なるほどねジャック。丸腰で立ち向かうとか何考えてんのかと思ったら、そういうことか。

「か、火山があっ!噴火したー!!」
「……ふ、あははは!! やっべえ、傑作!」
「え、な、なんだシー?!」

 突然笑い出した俺に、横にいたギンタがぎょっとした顔で振り返る。でもゴメン、俺答えられる余裕ないわ。やばい、マジでウケる。

「あははははあ!! ジャック、最高! 俺お前のこと好きだあ!」
「や、やべえおっさん! シーが変だ!」
「変っていったら、パノも変だよっ。さっきは叫んでたのに、今は体中を叩き出してる!」

 スノウ姫の言葉に、せっかく収まりかけていた笑いが再び込み上げてしまった。ダメだ辛い、俺3rdバトル出れないかも。

「……シーは放っておけ。コイツは時々頭がおかしいんだ」
「ふ、あは、あははっ、ちょっアルヴィスだまれ、ははははは!」

 やっぱダメだ、アルヴィスの呆れた毒舌にもうまくつっこめない。ああもう辛い、なんでこのタイミングでマジックマッシュルーム使うかなジャック。

「あのキノコの形見たことあるよっ。マラライダケ!」
「食いもんか?」
「あは、はは、んな訳ないじゃんギンタ、あはははっ!」
「……おめーは当分口開くなシー。ありゃキノコの幻覚作用だ」

 その通り、アップ系になれば凄まじい高揚感が来るけど下手すると死にたくなるレベルの絶望が訪れるえげつないキノコなんだ、あれは。

「そのキノコは俺にしか抜けないっすよ。ギブアップしますか? パノさん」

 くっそウケてる俺をよそに、ジャックがそう言って未だラリってる女の子に近づいた。
 あ、パノって言ったんだあのルークの子。全然興味なくて覚えてなかったわ、俺。

「……ハイ!ギブアップしまーすぅ!」

 と、突然パノがジャックに飛びついた。やったね春が来たじゃんジャック、と笑いすぎて息も絶え絶えな俺に、アルヴィスが呆れ切った視線を向ける。いや正直こっちも辛いんだって、アルヴィス。

 こうして無事勝利を収めたジャックは帰ってきたが、幻覚作用の消えたパノに殴られ蹴りまくられてた。ジャックカワイソー。


「……ていうか、なんでシーはそんなにウケてたんだよ」
「俺が戦闘に幻覚に使うのは言ったろ? 幻覚に関するアームなら大抵なんでも知ってんの。だからどーなるかなんて目に見えてたから、まじ面白くて面白くて」
「どこが面白いか全然わかんねえんだけど」
「やめとけギンタ。聞くのが間違いだ」


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