「……ふざけないでよ」
初めて聞く、
恭弥の、怒声。
「なんで、なんで、」
ひどく低い声で、
目をぎらつかせて、
握りしめた手を保健室の白い壁に叩きつけて、
恭弥は、泣いていた。
「まだ夏じゃないでしょ、」
「…もう、夏だよ」
「まっさかりじゃない」
「…うん」
でも、夏はきてしまったんだ。
「君なんて嫌いだ。大嫌いだ、」
「……うん」
恭弥の目は乾いていて、涙は落ちてなんていなかった。
でも、泣いてるとユイは思った。
恭弥が、泣いている。
「大嫌いだ大嫌いだ大嫌いだ、」
「…うん」
「泡になって消えてく君なんて嫌いだ見たくもない信じない、」
「……うん」
「僕は君なんて大嫌いだ」
「…俺は、恭弥のこと、すきだよ」
ユイの囁きに、
雲雀の動きが止まった。
「……嘘吐き…」
なら、
なんで置いていくの。
ベッドに頭をうつぶせて、
雲雀はぎゅっとシーツをにぎる。
残される方はたまったもんじゃねえ。
いつかのシャマルの呟きがきこえた。
「…きょうや、」
ごめんね、
でもね。
「……だいすき、だよ」
残していく方も、
つらい、よ。