Hello,これが俺達の日常(中)
「ごめん、そこちょっと邪魔」


 なにやら全く場にそぐわない言葉を吐いて、青年はあっさり男の群れに飛び込む。
 突然の展開に呆然としていた男達も、さすがそこはプロ、一瞬で正気に戻ると青年に刃を向けた。
「なんだてめぇ、誰だ」
「ボンゴレの手の内か?」
「だけどこんなやつ……見たことないぞ」
 それでも動揺は隠せないでいる男達に、青年は黒髪を揺らしてにっこりと笑う。
 まるで無邪気であどけない、子供のような暖かな笑みを。


「うるせえよ、死ね」


 しかし放たれたのは凍り付くような冷ややかやな声音。
 紛れもない殺気を含んだそれは、先ほどの笑みとは信じられないほどのギャップがあり、相手の動きを一瞬止める。
 その隙を、彼が見逃すわけもなく。

「チャーンス」

 にやり、毒の入った笑みで口元を飾り。
 青年は小首を傾け、両の手の甲を胸の前で広げた。
 そこに刻まれているのは、明らかに一般人とは異なる黒い紋様。

「じゃあ、」

 さよーなら。
 ぺろ、と小さく舌を出し。
 次の瞬間、彼の手が闇夜に眩い光を放った。


***


「……きょーや生きてるー?」
「生きてるよ煩いな」
「オッケーオッケー、そんだけ口が聞けるなら上等だ。って訳で背中合わせでお互い頑張らない?」
「……今背中痛いんだけど」
「奇遇だな、俺もだよ」
 その言葉に驚き、改めて彼を見やる。
 月光に照らされた彼の姿は、よく見ればあまり良いとは言えない状況にあった。
「……なにそのボロボロ加減」
「うわあうざあ。恭弥に言われたくないんだけど」
「は?何言ってんの。咬み殺すよ」
「今咬み殺さなきゃいけないのは俺じゃなくて奴等だろ」
 笑いをおさめ、夜無は右手を軽く振った。
 途端、消え失せる緑の防御壁。
「……まあいいや」
 とん、と当たる肩から感じる、温もりと力。
 前には3人、
 おそらく彼の前にも3人。
「とりあえず、君は後で咬み殺す」
「体調万全な時にお願いしたいです」
 くくっ、と背中から笑い声。
 肌が粟立つ感覚がした。
 それは多分、彼がその手から雷電を生み出したからではなくて、
「さて、いきますか」
 なんでもないようにそう言って、
 雲雀と同時に地を蹴る、彼との共闘だから。


 なぜか先ほどよりも力の込もる左手に口元を緩めて。
 雲雀は得物を薙ぎ払った。


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