堕天使と契約を。 | ナノ
「ユウ」
雲雀の柔らかな呼びかけに、
金髪の少年はゆるやかに振り返った。


「あの2人、なんか仲良いッスよね」
「ああー、雲雀とユウだよなー」
「どう思われます?10代目」
「え……」
教室の外、廊下を歩く2人をぼんやり眺めていたツナは、突然の問いかけに目をしばたかせた。
「え、ええっと…ごめん獄寺君、何?」
「あの2人、なんで仲良いんだと思う?って」
聞き返したツナに、ニカッと笑って答えたのは山本だった。
なんでてめーが答えんだよ、10代目は俺に聞かれたんだと噛みつき出す獄寺をよそに、ツナはもう1度廊下に目をやった。
並んで歩いていた2人の姿はもうそこには無く、あの日のように灰色の羽根が舞い落ちる、なんてことも、当然ない。
つまり、
「やっぱ俺の気のせいかなー…」
「10代目?」
ツナの呟きに、山本へ突っかかっていた獄寺がきょとんとする。
なんでもないよと我に返ったツナが慌てて両手を振れば、2人は顔を見合わせ、まるではかったかのように揃って廊下へ目をやった。
放課後のそこには、当然誰もいなくて。



「…俺たち、仲が良いって噂されてるみたいだよ、雲雀」
「面白いね」
並んで歩く、夕暮れの廊下。
伸びる影は2つ、
交わす声音も2つ。
「利害が一致してるからね、君とは。じゃなきゃ僕が群れたりしない」
「利害、じゃなくて嗜好、じゃねーの」
「それも間違ってるよ」
僕らが行動を共にするのは。

唐突に、そこで雲雀は言葉を切る。
妙なところで口を閉ざした雲雀に、けれどユウも何も言わなかった。
ただ、夕暮れだけが全てを赤く染め上げていて。





「…じゃーね、雲雀」
「…またそこから帰るの?そこは出口じゃないよ」
「俺ここから降りるの、好きなんだよ」
「へえ」
キョーミなさそ、と片頬で笑い、ユウはバサリと翼を広げた。
紅い夕暮れに、灰色に染まる翼を。
「また明日、雲雀」
「ねえ」
応接室の窓から飛び降りようとする、いつもと同じユウの言葉に、
いつもと違う言葉をかけたのは雲雀だった。

「君は、」
言いかけ、雲雀は急に口をつぐんだ。

「…え、何?」
「なんでもない」
早く行きなよ。

なんだかずいぶんと理不尽な雲雀の言葉に、
わかったよ、と少年は苦笑し窓枠を蹴る。
細身の体に不釣り合いな大きさの翼が、
その背中で重たげにはためいた。




君は、本当に堕天使なの。


馬鹿げた質問は、雲雀の唇から二度と零れ落ちることは無かった。
2人が行動を共にする、その理由と同じく。



そして彼は翼を広げる


|5/10|bkm / BACK

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -