貴方と私の風紀な日々 | ナノ
パイナップルは今日もご機嫌

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「唯斗、久しぶりですね」



振り返った時の反応に困りました。
某南国果実を彷彿とさせる特徴的な髪型、
中身と真逆の上品な笑みを浮かべた口元、
着崩された黒曜中の制服。


「…骸、久しぶりですね」


とりあえず、相手と変わらない挨拶を返します。無難でしょうから。
彼が委員長をボッコボコにした過去は知っていますし、現在は一応味方(?)みたいなものだとはわかっていますが、なんというか、複雑です。多分理由は簡単で、


「あなたに会いたかったんですよ」


そっ、と腰に回される腕。
引き寄せられる体。
近付く顔。
無駄に整ってるのが問題ですね。
そう、こういうことをされるから私の内心が複雑になる訳で。


「…近いです、骸」
「クフフ、唯斗の顔がよく見たくて」
「…あなたはどうせ幻なんでしょう」


私が呟いた言葉に、骸は驚いたように目を見開きました。
知ってますよ、本当のあなたは牢獄にいることなんて。
こうしてすぐ側にいるのはあなたの体ではない、別の人のものなのだと。


「…なんか、むかつきますよね」
「え?」
「叩き潰したくなります」


だって、あなたは私に会う度にこうしてちょっかいを出してきますけれど、それは生身のあなたじゃないじゃないですか。


ぷく、と頬を膨らませてみます。わぉガラでもない。
似合ってない、というのは自分でもよくわかっていたのですぐやめました。あ、骸も動きが止まってますね、やっぱインパクトがでかすぎましたか。ごめんなさい。


「……唯斗」
「え、なんですか」
「…今の、反則ですよ」
「…は?て、はっ?!」


ぐい、と顎に手をかけられ、
眼前に青と赤のオッドアイが近づいた。


「…ん、んんっ……」
「…ふ……」
「…は、離し…んんっ?!」
「…可愛い、ですね、唯斗…」
「んっ、ぁ……」


何してるんですかこの男?!
おかげさまで頭が真っ白です、脳内のデータが多分ぜんぶ吹っ飛びました。
いやなんでこの男と私はキスをしているんでしょうか。声を出そうとしたら思いっきり舌を入れられますし。
そういえばここ道路ですよね、ちょっと待ってください見られるじゃないですかおいお前。
頭の中でぐるぐると様々な思考が飛び回るのですが肝心な対処法が出てきません、これはまずいです。引き離そうにも後頭部を押さえつける骸の手、腰に回された力強い腕、ていうかくらくらしてきました、あれこれまじでヤバイですか?


「…っ、ん……」
「…ふっ、……」


ヤバイです、真面目に酸欠で体に力が入りません。目の前も滲んでます。すぐさまハンマー出しとくべきでした、いやでもまさかこんな事が自分の身に起きるとか思わないじゃないですか、あ、やば、立ってられません。


「…っ、あ…」
「…は、フフ、可愛いですね、唯斗」


やっと唇が離れたと思う間もなく目を覗き込まれました。相変わらず手は頭の後ろ、はい離れられません。近いですほんと近い。


「…馬鹿なこと、言ってないで、離してくれませんか、叩き潰し、ますよ」
「…呼吸が整ってませんよ?」
「煩いです」


誰のせいだと思ってるんですか。
とっさに体を捻って距離を取り、ハンマーを構えました。
骸の認識を改めるとしましょう、意外と危険な人だったようです。


「…酸欠でクラクラしている唯斗、なかなかかわいかったですよ」
「死んでください」


思いっきりハンマーを投げつけましたが、上機嫌に笑った骸は次の瞬間には消えていました。

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