貴方と私の風紀な日々 | ナノ
学ランとマシュマロと写真と私

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街中を歩いていたら、
突如背後から思いっきり抱きつかれました。


「だーれだっ」
「変態」


一言ばっさり宣言し、私は容赦なくハンマーを振るいます。
いえこれは正しい反応でしょう。突然背後を取り、あまつさえ両腕で抱きついてくるなんぞこれはもはや変態・痴漢・奇人・狂人のどれかに違いありません。遠慮なく叩き潰します。


「唯斗ちゃんストップ!僕だよ僕!」


相手が慌ててホールドアップしたのを見て私は一瞬動きを止め、


「ああ、変態ですね」
「違うよ!よく見て!」


やっぱり遠慮なくハンマーを振り下ろしました。




「……もー、唯斗ちゃんってほんと乱暴だよね。おしとやかにしてれば人形みたいなのに」
「余計なお世話です」

叩き潰されたいんですか?と私がハンマーを薙ぐと、しかし白蘭は軽く受け止めました。
にっこり、余裕の笑みなんか浮かべて、
まあ腹立だしいことこの上ない。

「…ていうかあなた暇なんですか?」
「まっさか!今日は唯斗ちゃんに聞きたい事があってわざわざ来たんだよ!」

テンション高いですね。
並盛までわざわざ来るような事ですから、きっと何かすごく大切な質問なんでしょう。

「前から気になってたんだけどさあ、」
「はい」


「なんで唯斗ちゃんって、セーラー服じゃないの?」


ずっこけました。

「……はい?」
「だってほらー、雲雀チャンとか学ランじゃない。風紀委員は皆そうなんでしょ?」

唯斗ちゃんは女の子だから学ランはおかしいだろうけど、ならセーラー服だよね?
とどこまでもすっとぼけな発言をしてくれる白髪を引っ掴み、私は手加減ナシに引っ張ります。

「痛っ!何すんのさー」
「セーラー服なんて着れる訳ないじゃないですか。学ランならまだしも」

あんな物が私に似合うと思えません、
という言葉を、相手がどうやら物凄く勘違いして受け取ったようだという事に気が付いたのは、

そのすぐ後の事。





「…でっ、なんで、こうなるんですか…!」
「うんうん、可愛いーよ!唯斗ちゃん」

何がカワイーよ、ですかこの白髪ボケ男。

なぜかあの後、唐突に拉致られた私は飛行機に乗せられ、よく知りもしないミルフィオーレの基地に飛ばされました。
やめてください、今日こちらは平日なんです学校あるんですよと全力で訴えましたがことごとく無視されました。笑顔で。
ハンマーも当然出しましたがあっけなく取り上げられました。もうなんなんですかこの拷問。
ですが、さらに拷問じみたことには、

「はーい、次コレね」
「…どっから入手するんですこういうの…」

ニコニコとアホみたいに楽しそうな白蘭が差し出す、黒い制服。
ここまでの履歴言いましょうか?
ブレザー型(黒ver.と白ver.とチェックver.)、ネクタイ型、ロンスカ型、その他諸々とりあえず思い出したくもありませんが、おぞましい数々のパターンの制服を着せられました。
こんなに精神えぐる行為があったのだと初めて知りました。もう死ねますね。
もちろん当然死ぬ気で抵抗しました、ですがダメですね、私の死ぬ気は綱吉の足元にも及ばないようです、事態はなんにも変わりませんでした。正直なにを言っているのか自分でもわかりませんが、それくらい私はダメージを負っているんです。疲れ果てました。

「これ…なんですか…」
「学ラン」

そんな某棒キャンディーキャラクターのようにてへっ、と舌を出されても可愛くありません。
むしろ腹の底から叩き潰したい。

「やっぱ唯斗ちゃんは何でも似合うねー」
パシャッ!

「……は」
何やら妙に大きな音に呆然と顔を上げれば、

「はーいピース」

にこにこ微笑む白蘭withカメラ(本格的)。

「…何してるんですか」
「可愛い唯斗ちゃんを収めてるんだよー」

再びパシャッ!

とっさに顔を手で覆いましたが、
待って下さい、何してやがるんですかこの変態!

「ちょ、著作権の侵害(?)ですよ!」
「(それ言うなら肖像権ね)じゃあ次これね!最後だから」

スルースキル高すぎじゃありません?!
手渡された黒い服に、私はもう全てを諦めて服を広げました。

「…これ、は」
「セーラー服!」

やっぱ唯斗ちゃんにはコレが1番だよね、と笑う、白蘭はとっても嬉しそう。

…何がしたいんでしょうかね、この男。
自分の仕事ほっぽっておいて、ほんとに大丈夫なんでしょうか?いえ大丈夫じゃないですね、多分こいつの頭の中身がもの凄く。

…まあ、まるでそれこそ女の子のように取っ替え引っ換えいろいろな服を着るだなんて経験、別に私もそれほど嫌だったかと聞かれれば、まあ、そういう訳では無い、んですけども。


「どーかした?唯斗ちゃん?」
「いえなに、も…」


無いです、と言い掛けて、私は着ていた学ランの襟に普通に手をかける白蘭に気が付きました。

「…待ってください、何してるんです?」
「脱がしてあげてるんだよー」

死んでください、と廊下にバカを叩き出したあの時が、多分私が人生の中で1番の力を発揮した瞬間でした。





のち、数分後。

ガラッ、
「ちょっと!何してるんですか!」
「あ、正ちゃんー」
「あれ、天原さんがなんでここに…って、あなた何させてるんです?!」
「野暮な事聞かないでよー、決まってるでしょ、制服プレがっ」
「本当に死んでください」





のち、数日後の並盛にて。

「…何これ唯斗」
「けほけほっ、そ、それどこからっ…!」
「君のこの前の欠席届けに入ってた」
「あのクソ白蘭…!!」

風紀を乱した、といくばくか前の痴態(学ランとセーラー服写真)を手にトンファーを振るう委員長に、この後、私は当然のごとく咬み殺されました。
私のせいでは無いと思います、絶対に。





「…委員長、天原は…」
「ああ、風紀を乱したから、さっき仕事を倍にして外に出した」
「は、はあ…その、写真がそうですか?」
「そうだよ。この学ランとセーラー服写真」
「に、似合って…ゴホゴホッ、なんでもありません。……委員長、その写真自分が処分致しましょうか?」
「…いや、」


草壁の言葉に、
雲雀は机の上の写真を手に取り、
そこに写る少女を眺める。


「…これは、僕が処分しておくよ」


静かにそう言い、雲雀は胸ポケットに写真を入れた。

その後写真は処分される事はなかったというのは、
誰も知らないここだけの話。



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