I want to bite you to death! | ナノ
双子の弟大暴走!事件(ギャグ)
朝起きたら、雛乃がなんだか変だ。


「……雛乃?」
「…おはよ、雛香」
目を開けたら、なぜか目の前に雛乃のどアップ。
いつも朝起こしてくれるのは当たり前なんだけど、なんか今日は妙だ。
だって雛乃はいつも軽く揺すって起こしてくれて、それでも俺が起きないと文句を言いながらもそっと出てくのだ。
なのに、なんで、

今朝は俺の上にのって顔を覗き込んでるんだ?

「……雛乃、あの…」
「…雛香」
妙にふくれっ面みたいな顔で、弟は俺にずいっと顔を近付ける。ヤバイ、近い。キスできそうだ。
「…雛香はさ」
そのままの距離で、

「……僕のこと好き?」

我が弟は爆弾を放った。




「委員長!!俺の弟が変だ!!」
「うるさい、静かにドアも開けられないの?」
「うおいきなりトンファー!」
ドアを開けたら真横にトンファーってどういうことだ。どんな状況だ。
「違う!聞いてくれ、雛乃が変なんだよ!」
「……宮野雛乃?彼はいつも変でしょ」
「違う!俺に朝からいきなり『好きだ』って言ってきた!」
「………は?」
「しかも学校行こうとしたら手つなごうとするわ抱き付いてくるわでやっぱりいつもと違う!」
「…惚気ならイラつくから出てって」
「いや相手双子の弟なんだけど?!」
再び振るわれそうになったトンファー。まじ話を聞けよ暴君!
「…ていうか、それ害あるの?ほっとけばいいんじゃない?」
「俺達双子の世間体と俺の理性がやばい」
「後半は聞かなかったことにするよ」
このブラコン、と冷めた瞳で雲雀がこちらをじとっと見たが、雛香はそんなどころじゃない。
「…風紀委員長、なんか良い解決案ないか」
「僕に聞くのそれ…」
「だって沢田も獄寺も山本も良い案なかったし」
「知らないよ。ていうか仕事の邪魔。出てって」
「うわぉっ?!」
今度こそ顔面に飛んできたトンファーをナイフで防ぎ、慌てて雛香は応接室を出た。


「…どんな時でも隙は無いんだね」
残念、
と中でため息をついた暴君のことなど知らずに。



「雛香、あーん」
「雛香、ぎゅーっ」
「雛香、大好きだよ」


「……雛乃」
「ん?」


「そろそろやめろ!俺の理性が限界だから!!」


「ツッコむのそこなの?!」
ツナは頬を引きつらせながらいつも通りつっこんだが、目の前のいちゃいちゃバカップルの行為は終わりそうにない。
「しっかし、いつもに増して気持ち悪さがすごいっすね…大丈夫ですか、10代目?」
「俺もなんかやだなー」
「クラスでもみんな見てくるしね…」
なので屋上に避難して来たのだが。
「雛香雛香、今日はいっしょに寝よーよー」
「……?いつも一緒に寝てるだろ」
「違う違う、いっしょの部屋で!!」

「「「「?!!」」」」

雛乃の衝撃発言にあぜんとする4人だったが、頬を染めてニコニコと笑う雛乃は気付いた様子もない。
「…い、一緒の部屋って…」
「うん、雛香の部屋!」
あ、僕の部屋でもいいよ?
そう言って首をかたむけた雛乃に、
「…それはまじでダメだ、俺の理性が…」
「雛香君やっぱりそこなんだね?!」
頭を抱える雛香につっこむツナ。っていうか理性って。仮にも弟だろう。
いつもはもう少し冷静な雛香も、愛しの弟が絡むとおかしくなってしまうようだ。
「…でも真面目に、いつまでもこんなんじゃ困るしな…」
頭にぎゅうぎゅうと抱きつく雛乃の腕をぽんぽんと叩き、雛香はため息をつく。
「…なんか、こうなった原因に心当たりはないの?例えば、変な物食べたとか…」
「んー、んなこと無いと思うんだけど…」
「俺としても雛香にベタベタしてんのこれ以上見てられないんで、雛乃のアホ野郎に一刻も早く戻って欲しいすね」
「それは俺も同意見!」
「ああ?!んだと野球バカ!」
「えっ、そこなんで急にけんかしてんの?!」
最早ツッコミが追いつかない状況。


「…良い案を思いついたよ、雛香」


そこへ。
やって来たのは、


「…僕が彼を元に戻してあげるよ」


学ランを風にはためかせ、
銀の得物を光らせる、


「…ひ、ヒバリさん……」


並盛一の大暴君の姿だった。




「…え、良い案って?」
気配を察していた雛香は驚くこともなく、いつも通りに貯水槽の上の雲雀に話しかける。
「簡単だよ」
ひょいっと貯水槽から下りると、雲雀はカチャッとトンファーを構えた。

「彼の頭をこれで殴る」
「荒療治!!!」

思わず反射でツナはつっこんだ。
「…え、それは…」
雛香が眉をひそめる。
「ショックで元に戻るかもよ」
「…あー、確かに…」
「雛香君?!」
なにやら納得し始めている!
けっこう危険な案だと思うんだけど?!
「…あのー、俺思ったんすけど」
さすがに聞いていられないと思ったのか、獄寺がそっと手を上げた。
「?どうしたの、獄寺君」
「…シャマルに聞いたらどうっすかね」



そして保健室にて。
「あ、わりぃ」
なぜかゾロゾロと入ってきたメンツを見るなり(雲雀はどっか消えた)、Dr.シャマルは手を合わせた。
「昨日宮野弟に試しでかけた『ベタベタ病』、そのまんまにしちまった」

開口1番、とんでもないことを吐き出す医者に、


「「「「お前かっ!!!!」」」」


ツナ達4人のセリフが一致したのはもちろんの事だった。



この後シャマルのトライデント・モスキートで元通りになる雛乃だったが、
「…ベタベタの雛乃もかわいかったな…」
「気持ち悪いよ君」
「いやだって…っておいっ!」
「…もうちょっと隙を見せてよ」
「ふざけんな。トンファーはそう簡単に人に向けて投げるもんではありません。っていうかなんでお前は機嫌悪いんだよ」
(「……もう少しで邪魔な弟の頭をかち割ってあげられたのに」)



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