クローム、ハッピーバースデー!(クローム)
「BuonCompleanno、……で、合ってるよな?」
「……え」
「誕生日おめでとう、クローム」
ばさ、と目の前に差し出された花束に、クロームは目をぱちぱちさせた。
「……雛香。どうして」
「え、どうしてって……誕生日なんだろ」
は、もしかして俺間違えた?
そう言いさっと顔色を変える雛香に、クロームは慌てて首を振る。
「ううん、合ってる……けど」
「あ、だよな。安心した」
さすがに間違えてたらカッコつかないし、と雛香が安堵のため息をつく。
とりあえず目の前に差し出された花束を受け取って、クロームは彼の顔を見つめた。
「…私に、プレゼント……?」
「ん、まあ。黒曜の奴ら、まともに祝ってくれなさそうだし」
なんでもなさそうにそう返す雛香に、クロームはぱちぱち、もう一度瞬きをして下を見る。
彼女の腕の中に収まるのは、深紅と白に揺れるバラの花束。
「……雛香」
「ん?」
「…ありがとう」
うつむいたまま、小さな声で囁かれたそれに、雛香はくすりと笑みを零した。
「いいえ。おめでと、クローム」
「……お礼、しないと」
「へ?……いやいや、クロームが誕生日だからあげたわけであって、俺は別にー」
慌てて言いかけた雛香の前で、
突如、ちゅっ、と可愛らしい音が響いた。
「……は?え、ちょっ、クローム?」
「……お礼」
「いやいや待て待て。なぜに頬にキス」
「…?嫌、だった?」
「え、いや別に、嫌、ではないけど」
「なら、もう一回」
「は?…いやいやちょっと待てクローム!」
仕切り直して、数十秒後。
「……はあ、なんか疲れた…。クローム、お前自分を安売りしすぎだって。もうちょっと大切な時にとっとけよそういうのは」
「…だって、バラ……」
「え?」
「赤いバラの花言葉…『あなたを愛しています』」
「は、いやそういうつもりじゃ…って、白もあるだろ白も」
「白のバラ…『私はあなたにふさわしい』…」
「は?!……いやいやだから、そういうわけじゃ…!」
珍しく真っ赤になって慌てる雛香の顔を見て、クロームは小さく微笑んだ。
「……うー、なんにしてもおめでと、クローム…」
「…ありがとう、雛香」