I want to bite you to death! | ナノ
Pocky's day・上(雲雀)
「……今日はポッキーの日だよ、雛香!」
「はいストップ雛乃、雛香に迫る前に今この場と時間と状況を考えてから発言しようね、さあどうぞ」
「今は学校そんで教室、時間は朝のホームルーム前そして日にちは11月11日、これは完全絶対間違えようなく雛香にポッキーゲームをねだるしかない神的じょうきょヘブッ?!!」
「てめぇはいい加減自重を覚えろ!!」

朝っぱら、クラスメイトがほぼ全員揃うその前で、雛乃が殴られ獄寺が吠える。
雛乃の完全絶対間違えようなくアウトな発言は、もちろんクラス中にばっちり響いていたが、慣れっこのクラスメイトは揃って生暖かい目を後ろに向け、各自の席へ戻っていった。

「…もー、雛乃、頼むからおとなしくしてよ…」
「無理!絶対無理!だってポッキーの日だよツナ?!誰の、何のために存在してると思ってるの!!」
「?雛乃、席の横にあるそのバックどうしたんだ?荷物多くね?」
「ああこれ?雛香とポッキーゲームするためのポッキー」
「中身が二桁を余裕で超えてますけど?!」
「念には念を、ってね?」

にこっとバックを開く雛乃の前、
のぞいた箱の量に頬を引き攣らせるツナ。頭を抱える獄寺、笑う山本。

「…一体なんの念なんだよ…」
「ていうか、雛香はどこ行ったんだ?」
「あれ?そういえば…」

机につっぷし呻く獄寺を横に、山本がふと首をひねる。
今更ながら気付いた疑問に、ツナと雛乃は同時に目を見開いた。


「……雛香は?」






「……で?この状況は?」
「今日はポッキーの日だってさ」

言葉とともに、ヒュンッと空を切る鈍色の武器。

「知ってるよ、雛乃が山ほどポッキー買い込んでたからな、って、ッ!」
「安定してるね君の弟は」

前髪を掠めたトンファーに、雛香はぎりぎりで後ろへ飛んだ。危機一髪。

「…で?そんな雛乃とのラブラブタイムの予定時間に、なんで俺はお前と手合わせしてんのかな委員長さんっ?!」
「別に」

応接室、その壁を音速で擦るトンファーに、雛香は口元を引き攣らせた。
場所が場所なだけに、銃を出す事は不可能に近い。撃てば壁紙か家具に直撃だ。

「…ただ」

そして、一方的に呼びつけて一方的に武器を振るう暴君は、ギラリと好戦的に目を光らせる。

「なんとなく、咬み殺したくなったから」
「頼むからその物騒な思考回路を変えてくれ」

こっちはたまった物ではない。

「たまにはもう少し…ッ、穏やかな闘いを、て、うおっ?!」
「何、穏やかな闘いって」

息一つ乱さず、無表情に雲雀は武器を凪ぐ。
下がった瞬間、踵が壁に思いっきり当たり、雛香は思わず息を呑んだ。
慌てて前へ向き直れば、隙を逃さず振るわれるトンファー。

「ーっ、ちょっ、待っ」「待てない」

秒速で迫る銀の凶器に、雛香はとっさに口を開いた。
そう、全く何も考えず、本当にただ浮かんだ言葉だけを、


「穏やかなっつったらーポッキーゲーム、とか!!」


ーそう、自ら災厄を呼んでしまったのだ。


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