幸せな未来が来るまでは(雲雀)
・10年後
・変わる前の未来
目が覚めた瞬間が、1番くる。
「……。」
ぼんやり虚空を眺めていても、何も始まらない。
体を起こし、布団をはね除ける。
雲雀。
呼び掛ける声は、もう聞こえない。
「……大嫌い、だからね」
呟く。
いつの間にか、口から零れていた。
嘘吐き。
笑む。
笑える。
人間は何を失っても、笑える生き物なのだ。
その笑みが、どんなものであれ。
「……待ってなよ」
今日は、沢田と入江、そして宮野雛乃との会議がある。
ワイシャツに袖を通しネクタイを締め、上着を羽織り匣をセットする。
リングがあることも確認し、雲雀は大きく戸を開けた。
差し込む、眩しい陽光。
また、今日が始まった。
宮野雛香の、いない今日が。
「…許さないからね」
だから、待ってなよ。
また、会える、その日まで。