I want to bite you to death! | ナノ
思い出を作ろう(オール)
・10年後
・変わる前の未来




「…って訳で、来月の頭は仕事入れんなよ雲雀」
「は、なんで?君の命令なんてきかないよ」
「だっから!いちいち突っかかんなっての!」
ぎゃあぎゃあ騒ぐ2人を眺め、
ボンゴレ10代目ボス・沢田綱吉はため息をついた。

「…なんで会議の場でそれをするかな…」
「10代目!ここは俺が2人まとめて果たしてきます!」
「いやいーから獄寺君!たしかに一応休憩中ではあるし!まああと10秒だけどね!!」
「なんっで匣出してんだよこの暴君!ここで闘ったらいろいろ破壊されるからやめろ!」
「君の言い方がなってないからでしょ宮野雛香」
「うわあい休憩終わらねえ」

頭を抱えたツナの横、
果たしてきます!と飛び出そうとする獄寺に、
まーまーとその腕を掴んで引き戻す山本、
極限に楽しそうだ!と了平は豪快に笑い、
ふわあ、とランボがあくびをした。

そして。

「…そんなに嫌なら、私といっしょに行こう、雛香…」
「ちょっといい加減にしてよ雲雀さん、いくらその日僕が長期出張だからって…!」

さらなる騒動を招く、2つの人影。


「…クローム?!と、雛乃!!」
「君、今弟の時だけ明らかに嬉しそうだったよね」
「…雛香、いっしょに行こう」
きゅ、と雛香の右腕を抱き寄せるクローム。
「な、クロー…」
いろんな意味でざわつく一同の前、

「て、骸様が言ってる」

「やっぱりなそうだと思った!」
「死ねパイナポー」
ガクッとうなだれる雛香、ニッコリ笑い冷たく言い放つ雛乃。
ちなみに反対側の雛香の腕は、雛乃によってしっかりちゃっかり拘束済みである。

「…もー、っていうか、なんの話…?」
「この間片した任務、報酬のおまけにもらった日本旅行券」
ヒラリ、なぜか誇らしげにチケットを振る雛香。
「にほん…て、今更旅行するほどかよ」

この双子が日本、というより並盛に来て早10年、その間も任務で国内を飛び回る事は多く、何を今更という感じは全くもって拭えない。
呆れた目をした獄寺に、珍しく雛香はニッと笑った。

「任務とプライベートじゃやっぱ違うだろ。て訳で行くぞ雲雀」
「君が旅行好きとは知らなかったね」
「や、幼少の経験か、わりかし好き」

どこかうきうきしているように見えなくもない雛香の態度に、はあ、と雲雀がため息をついた。

「…まあ、行ってあげないこともないよ。どうせそろそろ休暇を取りたいと思ってた頃だったからね」
「よっしゃ!なら決定な」
「えー、雛香、行っちゃうの…?」
「大丈夫雛乃、1時間おきに1回電話するから」
「それもう連れてった方が早いだろ」
目をうるうるさせた雛乃(今年24歳)と指切りを交わす雛香(同じく24歳)を前に、獄寺が最後にきっちりツッコミを入れ締めた。





「…だが、宮野兄があれほど雲雀を熱心に誘うとは意外だったな!」
「…まあ、確かに…いつもあんなふうではねえもんな、雲雀ちょっとうらやましーかも」
「……。」
「獄寺君」
何の気なしに会話をする了平と山本の横、両手をポケットに突っ込み虚空を見つめる獄寺に、ツナは椅子に座り込んだままそっと声を掛けた。
「!じゅ、10代目、なんでしょうか?」
「……ううん」
ツナはぱっと面を上げた長年の友の顔を見、困ったような笑みを浮かべる。

「…なんでも、ないよ」



もう少し、素直になったら、なんて。
それが無責任な言葉だということは、超直感がなくともわかることだ。

(…それに……)

ちらり、ツナが目をやるその先、
並んで部屋を出ていく2人の姿。
珍しく楽しげに話しかける雛香の横、
そっけない表情をしながらも返答をする、雲雀の姿。


(…なんか、変だ)


妙なほどの雛香君の熱意。
もしかして、と。
ふっと浮かぶ、近頃感じる、嫌な予感。
まさか。



雛香君も、同じ予感を覚えているのだとしたら……?


よぎってしまった考えに、
ツナは密かに首を振り、息を吐いた。
そんな、縁起でもない。


これを逃したら、もう次は無いような気がして、
だなんて。





その予想が最悪の形で当たるのは、
そんなに遠くない、未来での出来事。



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