I want to bite you to death! | ナノ
所有印・上(獄寺)
・10年後
・変わる前の未来



こいつ、次期門外顧問じゃねーのかよ。

ため息をつき、獄寺隼人は傍らで眠りこける黒髪の青年を横目で見た。
ボンゴレアジト日本支部、嵐の守護者にあてがわれた部屋のベッドの上、
堂々と眠るは次期門外顧問、宮野雛香。

「…あのなあ」

苦々しげにため息をつき、獄寺はぐしゃぐしゃと頭をかく。

「てめえ、早く起きろっつーの…」

ぐっすり眠り込む白い頬を視界の端に、
ああもう目の毒だと、獄寺は顔を覆い再度ため息をついた。






時を遡ること数十分前、
真っ青な顔をした黒スーツの青年が部屋に飛び込んできた事が始まりだった。
沢田綱吉が正式に10代目の座に就いてから早いくばくか、そんな焦った顔を見るのは久々で、有難く休憩をもらっていた獄寺は思わず身構えたのだ。

『ど、どうされました10代目?!何か、いったい…』
『ち、違うんだ獄寺君!』

未だ青い顔をしたまま、ツナは口を大きく開き。
とてつもなく困った顔で、叫んだ。

『リ、リボーンが、雛香君に…!』






「…で、なんで俺が…」
思わず漏れてしまった言葉に、あわあわと獄寺は口元を押さえる。
まかり間違っても10代目のご命令、そこに文句や不満を抱く事などあってはならない。
たとえ、いくらその発端が10代目でないとはいえど。

チラリ、横目でもう1度様子を窺う。
常なら飛び起きてもおかしくない彼のこと、
しかし今宮野雛香はピクリともせず、穏やかな寝息を立てていた。

「…あー、ちくしょう…」

がしがし、またも意味なく頭をかきむしる。

「…人の気も知らねぇで、てめえは…」






『く、クスリを盛ったぁあ?!』
『ボンゴレ研究機関最高峰、最強の眠り薬だぞ』
『なに誇らしげに言っちゃってんのさー!!それをどーして雛香君に飲ませたんだよ!』
『うるせーぞ」
ボグッ。
『ったーーー!!』
『じゅっ、10代目ー!』

叫声と悲鳴の入り乱れる獄寺の部屋、
ツナの後ろから現れたリボーンはいつもの調子でいつものようにとんでもないことを言い放った。

『しっかしこいつもまだあめーな。俺の殺気に気付くはいいが弾を避けられねーとは』
『避けられる人いるのかよ?!』
どげしっ。
『ったー!!今の蹴りはなんで?!』
『むかついたからだ』
『横暴!!』
ぎゃあぎゃあ騒ぐツナとリボーンの横、
獄寺は運んできた人間をとりあえずベッドに寝かせると、おそるおそる振り返った。

『あの、10代目…』
『えっなに?!獄寺くん』

何やらリボーンと言い争っていたツナが、ぱっと振り向く。
獄寺は親指をぐいっと曲げ、ベッドですやすやと眠る雛香を指し示した。

『…こいつ、どうすればいいっすか…?』

あ、と。
ひどく困った顔になったツナの横、


『なら、てめぇが面倒見てやりゃどうだ』


ニヒルな笑みとともに、爆弾は投下された。


- ナノ -