I want to bite you to death! | ナノ
5月5日(雲雀)

いつも通りにノックをせずにドアを開けると、
いつもと違う反応をする委員長がいた。


「…君、風紀委員だったっけ」
「ちげえよ。何言ってんだ」

委員長サンってたまにすごいボケかますよな、天然?と雛香がくくっと笑うと、途端に相手の機嫌は急降下。

「…何、こんな休みの日に、君は僕に喧嘩を売りにわざわざ学校に来たの?」

仕事が無ければ全力で買ってあげるんだけどね、
と何気に恐ろしいことを言いながら、机に山と置かれた書類に手を伸ばす雲雀恭弥、並盛風紀委員長。


「誕生日おめでと」


カサ、と雛香が机に小さな包みを置くと、
休日まで働く真面目な暴力委員長は、目を丸くしてこちらを見上げた。

「…なに、これ」
「いや誕生日にあげるもんなんかひとつしか無いだろ」
むしろいったいなんだと思ったんだ。
「…何が入ってるの」
「ナイショ」

にや、と笑う雛香に、雲雀は眉を寄せると包みを手に取った。
「あ、ちょっと待てよ、せめて俺が出てってから」
「やだ。なんで君の言う事聞かなきゃいけないの」
とっさに包みを奪おうとする雛香の手をよけ、雲雀は掛けられていた細いリボンをするりとほどいた。
途端、中から転がり落ちる白い箱。


「……チョコ?」
「…ん、まあ」


俺の手作りだから美味いよ、
と平然と言ってのける雛香に、中身を開けた雲雀は目を細めた。
そのまま、四角いチョコを一粒取り出し、口に含む。
生チョコ、というやつだろう。
口に入れた瞬間あっけなく溶けたそれは、随分と甘く蕩けた味がした。

「…なんでチョコ?」
「あれ、甘いもの好きじゃなかったっけ」

ふと口を開いた雲雀に、雛香が首をかしげる。
何あげたらいいかなんてわからないから、どうせなら無くなる物が良いかなと思って。
そう言葉を続ける彼に、雲雀は唇に付いたチョコを舐め、言った。

「…確かに、嫌いではないね。コレ、美味しいし」
「そりゃ良かった」

雛香が笑顔を浮かべる。その笑みは心から嬉しそうなもので、彼にしては珍しいな、と雲雀は思った。


「誕生日おめでとう、雲雀」





5月5日、
それは君の生まれた日。
祝福されるべき、
素晴らしき祝日の日。




- ナノ -