きょーや(雲雀)
「キョーヤ、キョーヤ」
黒い瞳が僕を見つめる。
大きく幼いそのひとみは、僕をイラつかせるには十分だった。
「キョーヤ、キョ」「煩い」
いらいらと、舌打ちをひとつ。
たったそれだけで、彼はきょとんとした顔で彼方にこてん、と首を倒す。
「キョーヤ?」
『委員長サン』
呼ぶな。
呼ぶな呼ぶな呼ぶな。
「…きょーやぁ?」
『雲雀』
煩い煩いうるさいうるさい。
僕を見るな。目で追うな。
思い出させるな。
僕に、君の声を、
「きょーや、」
『ひばり、』
声が、聞こえる。
幼児退行、
そんな言葉があるけれど、
本当に文字通り子供へ見た目も中身も戻ってしまった彼は、
ただひとつ、教えた僕の名前を繰り返し繰り返し呼んでいた。
「きょーやっ、」
うるさい。
本当にうるさいよ。
どれだけ経っても「雲雀」止まりで、
僕の名前など1度も呼びすてになどしなかった癖に。
「…きょーやあ…」
やめてよ。
今更、何も知らない君に、
「きょーやぁ…」
その名前を、
そんなふうに、
呼ばれたくなどないんだ。
補足
10年バズーカの故障により過去と入れ替わった雛香と雲雀。
なぜかシリアス。