I want to bite you to death! | ナノ
似ているところ(獄寺)
「お前、苦手なもんねーのかよ」


そのひとことがきっかけだった。



「……苦手なもの?」
フォークをくわえたまま行儀悪く首をかしげれば、獄寺は返事こそしなかったものの肯定するように軽くあごを引いた。


沢田と山本は担任に呼ばれて、雛乃は委員会の用事で、
2人きりのお昼ご飯。
もともと互いに相手(獄寺は沢田、雛香は雛乃)がいなければそうそう喋らないタチなので、習慣で屋上に来たものの微妙な無言空間を作り上げていたわけだが。

そこへ、
冒頭の質問が突然きた。


「……苦手なもの、ねぇ」
あいかわらずフォークを口の端にぶらぶらさせながら、空を仰ぐ。
「…箸使うの苦手だな、俺」
「げっ、俺もだ」
「…そこで心の底から嫌そうな顔すんなよ」
「他には?」
「…んー、寝起きが悪い」
「……俺もだ」
「めちゃくちゃ嫌そうな顔…」
「てめぇもかなり嫌そうだけどな」
「料理すんの苦手」
「……俺もだ…って、てめぇこの前菓子作ってたじゃねぇか」
「お菓子は作れるんだよ。料理は雛乃の方が断然デキる」
「よし、俺は菓子も作れねぇから違ぇな」
「…それ、あんまりいばれる相違点じゃねえぞ…」


雲がおだやかに空を流れていく。
視線を下ろし、わずかに空白を空けて隣に座る獄寺に口角を上げてみせた。
「俺達、意外と似てんだな」
「…………」
「そこで史上最悪っつー顔すんなよ」
俺はわりかし嫌じゃないんだけどな。


そのまま何の気なしに立ち上がり、弁当の包みを片手に振り返った。
「獄寺、そろそろ帰ろうぜ…て、何おま」
「うるせぇ見んな!!」
「はあ?!」
なぜか座り込んだまま顔を両手で押さえている獄寺。
訳がわからず近づこうとすれば、ダイナマイトが飛んできた。
「っな、おまっ!」
導火線を全部切り落とすのは結構大変だったりする。
「何のつもりだよいきなり!」
「それはてめぇだ!」
「はあ?!!」
なぜかケンカ腰の獄寺に、自然と雛香も舌打ちする。
「…よーし、じゃあ獄寺今から教室まで競走な」
「は?何いきなり…」
「おらスタートッ!」
「な、ちょっ、待ててめぇ!」
「待てるか!」
「なんで急に競走なんだよ!!」
「むかつくから!」
「はぁ?!んだよそれ、雲雀に感化されすぎだろてめぇ!」
「ふ、ざ、け、ん、なっ!」
誰が雲雀に感化されてるだと。


訳のわからない競走の結末は、
教室にいたツナ達3人になだめられて終わりを迎えるのであった。




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