第九話「宝珠の力」


(エンマ!)

海に沈みゆく夫を

未来は一生懸命泳いで追いかけた。

しかし人間になってから泳いだことは

一度しかなく

前に進まない。

すると未来の手を引く者がいた。

フブキ姫、椿姫、百鬼姫だ。

(お姉さま!)

更に沈もうとしたエンマ大王を受け止めたのは

大ガマ王だった。

「お姉さま!パパ!

来てくれたのね!」

海上に顔を出して未来は笑顔になった。

「妹を助けるのは当たり前でしょ」

フブキ姫もつられて笑う。

「エンマも気がついたようだぜ」

大ガマ王がそう言うと

エンマ大王が目を覚ました。

「お父さん…すみません」

「いや、構わねえよ。

それより未来と宝珠を」

謝るエンマ大王に大ガマ王は少し笑い

未来がエンマ大王の手を握ると

宝珠が光り輝いた。

「宝珠か!」

それまで様子をうかがっていた空亡が

慌て始める。

しかし逃げ場はない。

未来とエンマ大王は宝珠を

頭上に掲げ

「「滅せよ、空亡!」」

二人の声がそろった。

「ぐおおおおお!!!」

強い光と共に空亡は消え去った。


「乾杯!」

翌日。

エンマ大王の屋敷の庭で

パーティーが開かれた。

空亡を倒したお祝いだ。

「空亡って消えちゃったのかな?」

「案外、浄化された魂は

どこかで幸せになっているかもな」

未来とエンマ大王は微笑んだ。

「そうだね…ん?」

しかし未来は急に口をおさえた。

「未来?!どうした?」

「急に気持ち悪くなって…」

「大丈夫か?」

エンマ大王は珍しく慌てたが

ぬらりひょんはそれを見て

「未来様…もしや…」

何か思い当たったようだ。

「…そうみたい」

未来もうなずくが

エンマ大王だけ意味が分からない。

「なんなんだ?」

「来年にはパパとママになるってこと」

お腹をさすって未来が笑った。


to be continued







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