第二話「死神」


未来は廊下の拭き掃除をしていた。

みんな、特にぬらりとエンマ大王が

ここを通ると思うと

掃除もはかどった。

「楽しそうですね」

すると背後から

聞いたことがない声がした。

未来が振り返ると

そこには黒服に鎌を持った

「死神」

というのがピッタリな妖怪がいた。

「だ、誰?」

未来は怯えた。

「私はデーモンオクレ。

魂を操ることのできる妖怪です」

「デーモンオクレ?」

聞いたことがない妖怪だった。

「はい。

そんなに怖がらないでください。

あなたを人間界から呼んだのは

この私なんですよ」

「あ、あなたが?!」

「ええ」

デーモンオクレは頷いた。

「そうなの。

じゃあ、お礼を言わないとね」

未来は立ち上がった。

「ありがとう。

人間界から呼んでくれて。

おかげですごく楽しいよ」

「それはよかったです。

しかし、エンマ大王から

ぬらりひょん議長に

乗り換えるとはねぇ…」

「え?」

デーモンオクレはニヤリと笑った。

「大王様はかわいそうですなー」

そう言ってデーモンオクレは

未来に近づいた。

一歩デーモンオクレが近づくと

未来はそのぶん後ろに下がった。

それを繰り返し

未来はとうとう壁まで追い込まれた。

「あなたも罪なお方だ」

「こ、来ないで!」

未来は叫んだ。

「未来!!」

すると未来を呼ぶ声が聞こえた。

ぬらりだった。

「ぬらり!」

愛しい人が来て

未来は心から安心した。

「ぬらりひょん議長…」

ぬらりは慌てて

デーモンオクレと未来の間に立った。

未来は頼もしい背中を見ていた。

「私の未来に何の用だ?」

「いいえ、ただ挨拶をしただけですよ」

デーモンオクレは首を振った。

「そうか、ならもういいだろう。

下がれ」

「了解」

そういうとデーモンオクレは

すーっと消えた。

「消えた…」

未来がつぶやくと

ぬらりが振り返った。

「大丈夫だったか?」

「うん、ありがとう」

「なら、よかった」

ぬらりは安堵のため息をついた。

「あいつは悪い奴ではないが…」

「そうだよね。

私を人間界から呼んでくれたんでしょ?」

「ああ、そうだ」

ぬらりは頷いた。

「それにしても…」

未来はあることに気がついた。

「海でも

こうやって助けてくれたよね?」

「ああ、そうだったな」

ぬらりも懐かしくなった。

「あの時は、本当にすまなかった。

馴れ馴れしくしすぎたと

反省ばかりしたよ」

「ううん、すごく嬉しかった」

あの時言った「連れ」という言葉が

今でも未来の耳に残っていた。

そして…

『大王様はかわいそうですなー』

『あなたも罪なお方だ』

デーモンオクレの言葉も

この先ずっと心に残るだろうと

未来は思った。


to be continued







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