6.願い(ロイエド)
※ロイエドでエド死ネタなので苦手な方はバック!
俺達は賢者の石を手に入れ体を取り戻した。
それからリハビリをし、俺は三ヶ月でほぼ回復した。
だがアルは約二ヶ月間を覚ます事が無く、目を覚ました時俺は泣いて喜んだ。
そして今、俺は何時も着ていた服を着てセントラルに向う電車の中にいる。
大総統に銀時計を渡すのと最後の頼み事をするために。
コンコン
「入りたまえ。」
「失礼します。」
大総統室の前で深呼吸をした俺はノックをした。
入室許可をえてからドアを開け、礼儀正しくお辞儀をしてから部屋の中に入った。
「君から来てくれるとは珍しい。どうかしたのかね?」
「はい。もう軍の駒でいる必要がなくなったので銀時計を渡しに」
「君がその程度の事で此所に来ないと思うのだがね。」
大総統は良く俺の事を知っている。
中央司令官が嫌いだと言う事と俺の事をみんなが子供扱いするのがきっと気に食わないときっと知っているんだろう。
「…バレバレですか。では、貴方にしか出来ないお願いがあるんです。」
「それは何かね?」
苦笑いをした俺はスーと真剣な顔つきに変わる。
それにつられる様にニコニコとしていた大総統も真剣な顔になった。
「もう…時が短いのかい?」
大総統は悲しそうな顔をし、言われた言葉に最初は目を見開いて驚いたが苦笑し、コクリと頷いた。
「はい。もう…」
「そうか……エドワード、願いとは自分が存在しなかった様にデータを全て消してくれだろう?」
ことごとく俺の言おうとしている事を言い当ていく大総統にエドは適わないなと呟いた。
「やってくれますか?」
「…最後の頼みを断る事は出来ないよ。」
「ありがとうございますっ!」
考える様な素振りを見せる大総統に断られるんじゃ…と思っていたが、大総統の言葉を聞き俺は頭を下げてお礼を言った。
「ただし、マスタング君にもちゃんと話をする事。」
「えっ。何でだよ!そこも大総統がやれっ…話しといて下さいよ。」
「お世話になっただろ?」
「〜〜ッ分かったよ!言えばいんだろ!!」
イライラとしながらドアを開けてバタンと力任せに閉めれば閉めたドアを背にしてありがとう。と言葉を残し、目立つ赤い上着をはためかせて目的地に足を向けた。
(…大佐)
グッと手を握り目的の人物が居るだろうドアの前でドアノブに手を掛けれないで何をどう伝えれば良いのかと何時もより回らない頭を回していれば後ろから声が飛んで来た。
「鋼の?」
「う、うわっ!」
「そんなに驚く事無いじゃないか。」
呆れた様な声にどこかホッとしている自分がいて首を横に振ってわりぃと言えば驚いた様に目が見開かれた。
「大佐、話しがあんだけど…」
「あ、あぁ。入りたまえ。」
ガチャッとドアが開けられれば俺は大佐の言葉に従い部屋の中に足を踏み入れた。
「……俺達取り戻したよ。」
「!本当かい!?」
左手の手袋を取れば長年日にあたっていなかった為か白い自分手を大佐に見せればおめでとう。
と何時もとは考えられないくらい自分の事の様に喜んで笑みを見せる大佐にズキリと胸が痛んだ。
「大総統に銀時計を返して来た。」
「そうか、その方が良い。はが…いや、エドワード。」
「な、なんだよ…」
真剣になった顔に何か気付かれたか?とかもしかして大総統が何か言いやがったんじゃ!?とか内心焦りながら表に出さない様に注意して声を紡ぐ。
「軍の駒でもなくなった君になら言える、気持ち悪いとか思うだろうが私は君の事が好きだ。」
「……は?」
予想外のそれもいきなりの告白にきょとんとした顔をして不抜けた声を出した。
そりゃあ俺もすすす…好、きだけど俺達は男同士で
「大佐、熱でもあんの…っ!」
小馬鹿にした口調で言ってやろうとした時、ドクンと心臓の音が異様に大きく聞こえ息が詰まる。
「エドワード?!」
「はっ…っ…く…」
倒れそうになった時、大佐が支えてくれたが上手く呼吸が出来ず、また発作が起こったことに大佐の前で起こるなんて最悪だとか真っ先に思ったのがそれだったがまだやらないといけない事が一つある。
だからまだ死ぬ訳にはいかない。
「…っ…は…」
「エドワード!エド!!」
名前を呼ぶ声が異様に大きく聞こえる。
力を振り絞ってポケットに入っている薬が入った小さめな注射器を取り出して自分の腕の血管に目掛けて注射針を刺してゆっくりと薬を体にいれていく。
「はっ…はぁ…」
「エドワード。」
薬のお陰で発作は徐々に抑れ、落ち着いて来たが、大佐にどう言えば良い?と頭の中で考えながら注射器を抜き、手慣れた様子でプクッと血が出てきた傷口へとガーゼを押し当ててテープを十字に貼る。
「何の病気なんだ?」
「……もうあんたには関係無い。」
じゃあと大佐の腕を放して出口へと向かい、ドアノブに手を掛けて引けば鍵もかけていないドアはすんなりと開いたが、バタンッとドアが閉まった。
なにすんだと後ろを振り向けば大佐はつらそうな顔をしていた。
「言いなさい。」
「…やだ」
「言いなさい!」
「っ……もう体が限界なんだ」
強い大佐の声に誤魔化すのは無理だと理解して叱られる事を覚悟して口を開いた。
だが、目は合わせなかった。
合わせられなかった
「賢者の石を使ったんじゃ無いのか!?」
「あんだけじゃ駄目なんだ代償が足りない。」
「それを分かっていて」
「あぁ、分かってた。」
辛そうに顔を歪ませる大佐に罪悪感が襲って来た。
表にそれを出さない様に大佐の目をじっと見る。
後悔はしていない。と目が訴えているのを読み取ったのか大佐が息を詰まらせたのが分かった。
「俺は今夜また旅立つ。そして誰にも見つからない場所で最後の時を過ごすよ。」
「駄目だ。」
真剣な顔で声で言われた言葉に何で大佐に言われないといけないんだとか色々言いたい事がある筈なのに言葉が出て来なかった。
「好きなんだ。いつの間にか君を好きになっていた。同性を好きになるとは予想外だったよ。気持ち悪いと思うか?」
さっきも言われた言葉にまだ疑っている自分がいる。
気持ち悪いなんて思わない俺も好きだと言いたかった。
だが、言ったらいけないと自分に言い聞かせて手を握り締め馬鹿じゃねぇの?と言葉を吐き出した。
自分の気持ちを押し殺して。
「感謝はしてる。だけどさ、俺は大佐みたいに同性を好きになるなるって、気持ち悪い。」
「……そう言うと思ったよ。」
泣きそうになった。
ごめん、ごめんなさいと何度も何度も大佐に心の中で謝って謝って…
ありがとうと好きになってくれてありがとうとお礼を何度も繰り返して両手を合わせた。
最後になるだろう錬成を行く手を阻むドアへと
「…バイバイ」
「エド!」
拘束が解けて振り返らず追い掛けて来ようとする大佐に手を振ったさようならと…
「ありがとう。」
一生に一度しか言わないかもしれない。
別れのお礼を
そして
この胸を締め付けられる様な
別れの辛さを
あなたは…
大佐はどうか……
どうか幸せに生きて
-END-
badendになってしまった…
本当はhappyendにしたかったのに!!
2010.9.3 完成
2011.3.11 移動
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