プロローグ
『───この刀はやっぱり桜が似合う』
“もの”である私に、彼は愛することを教えてくれた。 そして離れることの寂しさを思い知った。
『───あ、それ髪飾りにしたんだ。けっこー可愛いじゃん』
『───首落とされたくなかったら……しくじるなよ』
『───お前何したんだよ……国広怒らせるなんて相当だぞ?』
『───良かったね、それだけ君は愛されてる証拠だよ』
『───離れていても、お前は俺たちの仲間だからな』
“刀”である私に、彼らは仲間の大切さを教えてくれた。 そして裏切られることの辛さを思い知らされた。
嗚呼、苦しい。 悲しくて悲しくて、とても憎い。
『───アイツらは悪くない。だから絶対、復讐なんて考えんな』
平助くん。ごめんね。 やっぱり私には無理だよ。
だって私は目の前で見てしまったんだから。
『───平助くん後ろ!!』
『───……へい、す……け、くん……?』
『───っあああああああああ!!!』
私のことを愛してくれていた彼が。 私の大好きな主が。
かつて仲間だった人たちに殺されてしまったのだから───。
『紬の瞳は、桜みたいでとても綺麗だよな』
私に向かって笑いかけてくれる彼は、もう ───どこにもいない。
苦境に咲きし、夢見草
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