プロローグ


『───この刀はやっぱり桜が似合う』



“もの”である私に、彼は愛することを教えてくれた。
そして離れることの寂しさを思い知った。




『───あ、それ髪飾りにしたんだ。けっこー可愛いじゃん』


『───首落とされたくなかったら……しくじるなよ』


『───お前何したんだよ……国広怒らせるなんて相当だぞ?』


『───良かったね、それだけ君は愛されてる証拠だよ』


『───離れていても、お前は俺たちの仲間だからな』



“刀”である私に、彼らは仲間の大切さを教えてくれた。
そして裏切られることの辛さを思い知らされた。

嗚呼、苦しい。
悲しくて悲しくて、とても憎い。



『───アイツらは悪くない。だから絶対、復讐なんて考えんな』


平助くん。ごめんね。
やっぱり私には無理だよ。

だって私は目の前で見てしまったんだから。




『───平助くん後ろ!!』

『───……へい、す……け、くん……?』

『───っあああああああああ!!!』


私のことを愛してくれていた彼が。
私の大好きな主が。

かつて仲間だった人たちに殺されてしまったのだから───。





『紬の瞳は、桜みたいでとても綺麗だよな』


私に向かって笑いかけてくれる彼は、もう
───どこにもいない。




苦境に咲きし、夢見草


[ 3/110 ]
目次






×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -