桜の花びら一〇枚


「どうする紬!」

「は!?んなこと言われたって囲まれてんのにどうしろと!」


検非違使の相手をしながら、山姥切の質問に叫んで答えた紬。彼女たちは今、苦戦していた。
ボスとの戦いが終わって帰城しようと思った矢先にこれだ。くたばっていなかった大太刀に紬が殺られそうになったのは回避出来たが、それ以上にこの状況は危ういかもしれない。
見たところ、ざっと30はいそうだ。そんな数の敵をたった六振りで相手する方が可笑しい。こちらと相手とじゃ比率で言えば1対5で、おまけにこちらは刀装も少ないのだ。そしてよりによって紬は初陣。練度なんてあってないようなもの。他全振りが練度最上限と言えど、完全に状況は不利だった。勝機なんて無いに等しい。
刀装だけダメになると言うわけにはいかず、みんな所々に怪我を負い始めている。そんな状況を把握している紬は必死にどうするべきか考えていた。
先程までの敵と、明らかに強さが違う。幸い、彼女自身の機動が早い分、躱しながら何とか攻撃できているが、まともにやりあえば簡単に力負けしてしまうのは目に見えている。
だから今すぐにでも逃げたい、というのがこちらとしての考えだ。しかし敵が多い上に囲まれているため逃げるに逃げられないのだ。それに今撤退したとして、跡を付けられて本丸に奇襲されたりすれば完全に終わりだ。
そもそも第三勢力がいるなんて話、ほんの少し耳にしただけで、詳しくなど聞いてはいない。


「っうわぁ!」

「五虎退!」


五虎退が相手をしていたのは図体のでかい槍の敵だった。蹴り飛ばされた五虎退に向かって伸びる槍。危ないと思った紬は彼の名前を叫んで咄嗟に飛び込んだ。
鈍い音が自分の耳に届くと共に、右腹部に激痛が走る。


「っ……っらぁ!」


右の横腹に刺さった槍を左手で固定するように掴むと、彼女は右手に持っていた本体を敵の首狙って振り上げた。槍は首から血飛沫をあげ後ろに倒れる。それと同時に槍を抜きその場に投げ捨てれば、それらは灰のようなものに代わり消えていった。
槍の刺さった横腹から血がどくどくと流れ出す。刺さったところ自体は丁度羽織で隠れるし、そもそも返り血が着物に付いているため、よく見ないと気が付かないだろう。
───これくらい、何ともない。
彼女は怪我部分を羽織で隠し、振り返って五虎退を見た。


「……大丈夫?」

「!は、はい……何とか……」

「なら良かった」


大丈夫そうな姿を確認すると、みんなの所へ五虎退と向かった。五虎退は軽傷、次郎と鶴丸は中傷、山姥切と獅子王は重傷だ。怪我をしている彼らを庇うように敵との間に割り込んだ紬は、向かってくる検非違使を斬っていていく。敵はまだ多いが、やっと囲まれているという最悪な状況からは抜け出すことが出来た。
いい加減この状況を打破しなければ私たちはここで負けてしまう。と、嫌な結論に至ってしまった彼女は今の最善であろう策を実行する他ないと考えた。
どうにかするための方法、つまり打開策が、彼女の中にはたった一つだけあったのだ。


「……五虎退、1つ頼みたいことがある」

「な、何でしょう……!」

「君にみんなを任せる。彼らを連れて先に本丸へ帰城して」


彼女の言葉に一番最初に反応したのは鶴丸だった。彼は「!?おいおい、それだと君はどうするんだ紬!」と、彼女と鍔迫り合いになっている敵を横から斬りながら叫んだ。


「私はここで奴らを食い止める……だからその間に、」

「それじゃアンタが危ないじゃないか!」

「いくら何でもそれはダメだ……!兄弟達もお前のこと心配するだろう!」

「そうだ無茶だって!お前1人に任せられるわけねぇよ……!」

「じゃあここで全員折れるのか!!」


否定する彼らに、彼女は敵と戦いながらも声を上げた。あれだけ出陣前に大げさに心配されていたのだから、山姥切の言っていることも大体の見当がつく。きっと堀川に怒られるだろう。だけど。もし、そうだとしても。
ここで全員が折れたら?主サマや他の刀剣はきっと悲しむだろう。それならまだ……私だけが折れた方がいい。
今度は、目の前で主や仲間を殺させたりなんかしない。平助くんの様には絶対にさせない。私が必ず守ってみせるんだ……この命に変えても。
……と言っても、折れる気なんてさらさら無いのだが。


「私はもう大切な仲間を失いたくない……っだから!つべこべ言わず隊長の言うことぐらい聞け!仲間がいるより1人の方が楽なんだ。アンタらがいない方が戦うことに集中出来る!」


1番機動の高い私がここで十分に敵を引き付けてから1人で逃げる方が効率的なんだ、そう叫ぶ。
悩んでいる暇はない。そもそもここで悩む方が可笑しいのだ。打開策は一つしかないのだから。


「……っ分かりました、紬さんの言う通りにします……!」

「!ありがと五虎退……ボロボロで機動の遅い奴らを頼んだよ」

「はい!戻ったら急いで応援を……」

「いや、応援は呼んじゃダメ。敵に居場所を嗅ぎ付けられる可能性がある。待ち伏せされて本丸に攻め込まるれるなんて最悪な事態になるのは非常に避けたい。そんなことになったら後々面倒だか、らっ!っと……ほら、鶴もさっさと行きなってば!」

「……紬、絶対に帰って来いよ。本丸に唯一の花がなくなって毎日がつまらなくなるのはゴメンだぜ」

「何だそれ、今言うことか?まぁ言われなくたって当然帰るけど!……それから探しに来ようとする奴らがいたら『大丈夫だから来るな。来たらお前らも殺すから……いや、お前らが来た時点で自ら折れてやるからな』って伝えといて」


探しに来そうな奴は殺すなんて脅しじゃ効かない気がするからね。そう笑って言った彼女の言葉に鶴丸は渋々肯定の返事をした。
それじゃ、また後で。そう微笑んだ彼女に頷いた五虎退は、筆頭に彼らをフォローしながら急いで本丸へと向かって戻っていった。急いで帰っていく五振り。その姿を確認すると、彼女はざっと数えて20体くらいにまで減った検非違使を見据えた。
絶対に帰って来いだなんて……そんなの当たり前だ。絶対に帰るって約束したんだから。知らないところで勝手に折れないで、なんて言われているんだから。紬は羽織を脱ぐと近くにあった木の側に羽織を置き、応急処置として襟巻きを腰に巻いて止血する。
そして刀を握り直して深く息を吸い込んだ。


「さて、検非違使共……。こっから先は何があっても通さない。通りたくば、私を折ってからにしろ」


彼女は検非違使の方へ駆け出した。自分の一番能力の高い機動を駆使して敵を斬る。躱す。斬る。
仲間が近くにいないというのは守りの体勢に入らなくても良いということ。守る相手がいないのはとても楽で、より攻撃に集中が出来る。そのため先程の戦いより機敏に動くことが出来た。
しかし、孤軍奮闘と言うのもそれなりのデメリットがある。やはり仲間がいない分、一振りでこの数の敵を相手にするのは分が悪かった。槍が刺さっていた横腹は血が止まる気配はなく流れ続け、ズキズキと動く度にかなりの痛みが走る。気が遠くなりそうだった。こんな傷がなければ、もっと速く相手を斬ることが出来るのに。
敵と戦いながら、横腹の痛みとも戦う。そんな紬が右手に握った刀を振りかぶった時だった。横腹に感じた痛みで動きが鈍った所を、ここぞとばかりに検非違使は狙ってきたのだ。目の前の敵の刀が上から下に振り下ろされると同時に咄嗟に後ろへ下がったが、少し反応が遅かったらしい。横腹以外の場所から尋常ではない激痛が走る。


「っう……っ!」


左目を、やられた。
急な痛みに耐えられず、張り裂けそうなほどの悲痛な声を上げた紬。元々不利な状況が更に不利になってしまった。左手で片目を抑え、右目だけという狭い視界で刀を振るい続ける。
目をやられたのは2度目だった。1度目は池田屋で右の目を失った時だ。その日から彼女の体の傷は治らず、片目も失明したまま、藤堂平助と共に過ごしていた。だから、今回は逆の目をやられてしまったが片目には慣れているのだ。感覚は忘れていなかった。
今、視野に入っていない敵の事を考えても数は減らない。ならば目の前に見える敵から斬っていけ。見えない敵の気配は体で感じろ。全神経を研ぎ澄まして。
19体、18体、17体と減っていく敵。粘りに粘っておよそ15体にまで減らすことが出来た───のだが。
ふと、感じ取れた殺気。それは真後ろからだった。


「!!? しまっ───」

───ザッ


鈍い音が聞こえた直後、背中に衝撃が走った。







「何で紬を囮にしたんだよ!初陣だってのに!!」


ふざけんなよ、と加州の怒鳴り声が本丸中に響いた。堀川と和泉守と大和守の3人係で押さえられていた加州の顔は怒りに満ちていつつも泣きそうな表情だった。
その言葉を向けられた五振りは返す言葉もないと黙ったままただ俯く。この騒ぎを聞いて、近くにいた刀剣たちが何だ何だと顔を覗けに来た。
───第一部隊が帰還したときはかなり驚いた。
話はほんの少し前に戻るのだが、帰ってくると同時に縁側で待機していた新撰組が真っ先に駆け寄り帰還した彼らを出迎えた。だがそこには彼らが1番に心配していた刀剣───隊長の姿がどこにも見当たらない。和真もすぐに部隊の異変に気が付き急いで駆け寄ると、他のメンバーは傷だらけで……特に獅子王と山姥切は重傷らしく、彼らは次郎におぶられたり、鶴丸の肩を借りながらゆっくりと歩いてきた。一体何があったんだ、そう聞きたくても驚きと言う名のショックが大きく、和真は言いたい言葉が出て来なかった。
紬は!?と真っ先に問いかけたのは血相を変えた沖田の刀二振り。すると、見たところ1番怪我の少なさそうな五虎退が「それが……」と声を震わせた。


「検非違使に遭遇してしまいました……っ」

「検非違使……!?」

「本陣潰してさぁ帰ろうって時に出くわしちまって……」


次郎はおぶっていた獅子王を優しく下ろしながら悔しそうに呟いた。


「でも帰ってきたってことは勝ったんでしょ?紬は?」

「……すまねぇ、主、みんな……っ勝てなかった……30体以上の検非違使に囲まれて……粘るに粘ったんだけど……、紬は、怪我してる俺らを逃がすために囮なるから、先に、帰れって……っ」


辛そうに、悔しそに話し出す獅子王の言葉を聞いた途端、新撰組の動きが止まった。和真も耳を疑った。30以上の、検非違使?紬が囮?
それで加州の怒りが爆発し、今の状況に至る。


「落ち着いて清光くん!」

「これで落ち着ける方が可笑しい!……俺、探しに行ってくる!」

「僕も行くよ清光!」

「待て、そいつはダメだ。」


刀を取りに戻ろうとした加州と大和守を制止したのは鶴丸だった。そんな彼を見て、は?と眉間に皺を寄せる二振りに「隊長からの伝言がある」と言葉を切り出した。


「『大丈夫だから来るな。来たらお前らも殺すから……いや、お前らが来た時点で自ら折れてやるからな』だとさ」

「は、何それ……脅しのつもり?そんなことされても行くし」

「加州……君は紬の思いを無下にする気か?」


いつもとは違う冷たい表情を見せ加州を睨みつける鶴丸に、加州の背中がぞくりと凍り付いた。少しの間の後、彼は「……は?誰もそんなこと……」と呟くがそれもまた鶴丸の言葉により遮られる。


「言ってなくても君の行動がそうしているんだ。何のために紬が囮になってくれたと思ってる。君たちを脅してまで応援は呼ぶなと言ったのは、この本丸を守るためだと言うことがまだ分からないのか」


“鶴らしい”格好をした彼は「絶対帰ってくるとアイツは断言したんだ……仲間なら信じて待ってやろう」と言い残して、仁王立ちしている加州の横を通り過ぎた。


「……紬……っ、」

「清光くん……」

「取り敢えず詳しい話は後だ、先に手入れする。獅子王は俺が運ぶから、堀川は山姥切の手助けを頼む。……待ってるお前らも一旦中に入って待機しろ。和泉守は清光と安定を見ててくれな。」

「おーよ、任せとけ」


手入れ部屋へ行き、まずは重傷である二振りから手入れを始めた。和真本丸の刀剣がこんなに大怪我をして帰ってきたのは初めてだった。和真はそこまで霊力が強くないため手入れ出来るか不安であったが、もしもの時はもしもの時に任せればいいのだ。今考えたって仕方がない。取り敢えずやってみなければ分からないと、手入れする手を止めずにただひたすら続けた。
紬が無事帰還してくることを願いながら───。

───だが、何時間経っても紬は一向に帰っては来なかった。
2時間、3時間と経過していく時間の中、加州たちはひたすら待ち続けていた。彼女が帰ってくるよりも先に、手入れの方が次々と終わってゆく。
結局、紬が戻ってくる前に全員分の手入れが終わってしまい、和真は最後に手入れをした鶴丸の肩を借りながら、主の命により広間で待機しながら彼女の帰りを待っている加州たちの方へ向かった。


「手入れは終わった……紬は?」

「まだ帰ってないよ……主は大丈夫なの?」

「……はは、流石に霊力使いすぎて立つのもしんどいわ」


大和守の問いに、和真は乾いた笑いを見せながら呟いた。鶴丸に手助けされながら部屋の壁に縋るように腰を下ろす和真を見て「主さんは元々あまり霊力ないですもんね……」と堀川は心配そうな顔を見せる。


「そうなんだよ……だから怪我だけはないようにっていつも最善策を考えてたんだけどな……」


その言葉の後は長い長い沈黙が続いた。
探しに行くべきか、このまま待ち続けているか、和真の中で葛藤があった。鶴丸から手入れ中に詳細を聞いた所、紬曰く、時間稼ぎをしたら後を追うと言っていたようだ。だがしかし時間稼ぎでこれほどまでに帰って来ないのは可笑しい。いくら何でも時間が経ちすぎだ。
これは彼女の身に何か起こったと考える方が正しい。その確率は低くはない、むしろ高いだろう。
ここは先ほど出陣させた場所へ、何人か多めに送るべきなのだろうか。だがそれで再び検非違使に出くわしたり、本丸の位置を特定されて襲撃されたら一溜りもない。


『───私が折れる時はね、自分が犠牲になることで大切な人が守れるならって思った時だけだから。』


加州に向かって言っていた言葉を和真は思い出す。彼女一振りと、本丸や他の刀剣。どちらの方がより大切かなんて考えれば一瞬で答えなんて出てしまう。だが、やはり片方だけをとることなんて出来るはずなかった。
主である俺は、どうするべきなんだろうか。何が、最善策なんだろうか。と和真は疲れきった体で必死に考えていた。


「おや、まだこんなところにいたのか」


その声のした方へ目を向けると、三日月宗近が立っていた。その様子だと紬はまだ帰ってないか……と呟きながら和真の元へ寄る。自分の目の前に来た三日月に、彼は首を傾げながらどうかしたかと問いかければ「主に言っておきたいことがあってな」と小さく笑った。だが、目だけは笑っていない。


「……紬は、闇堕ちする可能性が高い」


予想外すぎる三日月の発言に和真や新撰組の刀が「は……?」と呟いた。三日月以外にただ一振り、鶴丸は驚いた様子もなく黙ったまま彼を見ている。


「初めて紬がここに来た日だ、その時に既に2回ほど堕ちそうになっておる」

「紬が……?そんなわけ……」

「残念ながらなくはないぜ堀川。俺も2回とも見ているんだ」


紬の自己紹介の前に起きた騒動で1度と、その日の夜にもう1度だ。両方とも三日月が止めたけどな……そうだろ?という鶴丸の投げかけに三日月は黙って頷いた。
和真も、加州も、大和守も、堀川も、和泉守も、息を飲んだ。初めてそれを知らされ驚きを隠せない状況で、三日月の次の言葉を待っていた。


「本人はどうやら気付いていない。無自覚のようだ」

「何で……どう見たら闇堕ちって分かんのさ」

「……眼だ。敵の姿は知っているだろう?瞳が濁っていつつも、あの様な怪しい光を放つ。……あとは纏う神気だな」

「そんな……全然気が付かなかった……」

「無理もない。三日月はともかく俺も最初ははっきり分からなかったからな。他に感づいている刀剣がいるとすれば……鶯丸くらいだと思うぜ」

「1度目、2度目は気を逸らして止めたが……これからはどうだろうな。余程前の主に思い入れがあるようだ。辛いことを思い出させてしまえば……恐らく一瞬で堕ちる可能性がある」


三日月はそのまま続けた。


「考えたくはないが、もし……帰って来なかった紬が闇堕ちしていて、俺達と敵として再会した時……そこに私情は挟むな。斬る覚悟だけはしておけ」


静かにそう言い放った三日月の言葉に、全員が黙り込み辺りがしんとした。


「……無理。」


そんな沈黙していた空気を破るように、加州はぼそりと呟く。隣にいた大和守が「清光?」と首を傾げた。


「そんなの無理に決まってんじゃん。闇堕ちしたなら元に戻すし、そもそもそんな事させない!」


ずっとこの本丸にいたいって思わせればいいだけの話でしょ……そんなの簡単じゃん……。俯いてそう呟いた加州は何か意を決したように顔を上げた。


「……俺、やっぱ探しに行く。」

「加州……」

「もう待てない。寧ろよくここまで待てたって話だよ」


そう言って立ち上がる加州は、黙ったまま自分を見ている鶴丸を見つめ返した。今度は止めるなと言うように。他の刀剣や和真の目線も加州へと集中する。
紬を信じていない訳ではない。だが、だからこそこんなにも帰りが遅い彼女が心配で堪らないのだ。俺の知らない場所で勝手に折れないでって約束もしたし、紬は絶対に帰ってくるとも言った。だから早く、昔みたいにへらっとした顔で「ただいま!」って帰って来てよ。心配していた俺達に「何変なこと考えてんの、馬鹿じゃないの」くらい言ってよ。加州は傍に置いていた自分の刀を手に取ると、きゅっと握りしめた。


「鶴丸さんがいくら信じて待っていろって言っても、いくら主がダメだって言っても俺は行くから……」

「……僕も。」

「……主さん、僕も紬を探しに行きます」

「俺もだ」


加州に続いて大和守、堀川、和泉守が立ち上がって和真を見る。その表情はいつにも増して真剣で、拒否するなと言わんばかりのオーラを放っていた。そんな彼らを見て、和真は大きく息を吐く。


「……分かったよ」


彼らの想いも汲み取れない様な最悪な審神者になった覚えはないし、これからもなるつもりもない。何が最善策なのか分からないからこそ、彼らの提案を飲み、実行してみるという手もある。
それにこれだけ時間が経ったのだ。それなのに検非違使が襲撃してこないということは、紬の手によって全滅したか、この本丸の位置を発見されずに帰ったはずだ。きっと再出陣しても問題はないだろう。そう感じた和真は「紬を探しに行くことの許可を出す」と彼らに言い放った。


「……ねぇ、そこは拒否しなきゃいけないところじゃないの?」


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