お誘い
ど、どうもみなさんこんにちは武藤紗雪と申します。章始めに私視点にさせてもらったのは初めてなのでウキウキ!…なんてことはなく。いや、ウキウキする前にそんなことを考えてる暇なんてないのです。今の私の状況では。
今は授業中。5限目。私はマサキ君…つまり、さっきのことが頭から離れなかった。嬉しくてつい、ほっぺにキスしちゃったけど…キスってあんなにいいものだったんだね。
「っ、」
そう思うと、急に恥ずかしくなって顔が赤くなる。授業中、何もないときに顔が赤くなるってどうなんだろうね、ホント…変な人みたい。でも、なんであんなに良かったな…って思えたんだろう。自分からしたから?…ってことは、拓人にも自分からすればいいの?そしたら嫌とか思わないのかな。
マサキ君が守ってやる、そう言ってくれてとても嬉しかった。自分の背負っている荷が、どこか、軽くなったような気がした。
何でだろう…拓人といるより、マサキ君といる方が…楽しいし、安心する。それに…またキスしたいって思ってる自分がいる。
………………………。
……………。
……ッハ!!これってまさか浮気じゃ…!!!そうだったら私、すっごく最低最悪な人間だ。もし拓人にバレたら…!
そう思いながら授業ノートを写すのも忘れ、頭を抱えるような勢いで机で荒れていた。
「………。」
うわーん、どうしよぉぉぉ…!!相談する人なんていないよぉー…!!蘭丸…は、いいや。やっぱやめとこう。これ以上蘭丸に迷惑なんてかけられない。
そう思った刹那、後ろから綺麗に折り畳まれた紙切れが飛んできて、私の机に転がった。紙を開いてみると、宛先は斜め後ろの席の拓人からで…。拓人が斜め後ろの席だったってことすっかり忘れて考え込んでいた。やばい、今までのこと全て拓人に見られてたかもしれない…。
そう思って少し焦りながら綺麗な文字を読む。内容は、『今日、放課後俺の家でテスト勉強しないか?』と書かれていた。あれ、拓人…今日部活休み…って、テスト勉強?……しまった!! 今日からテスト週間!!!だから部活がないのかなるほど!!!
すっかり忘れてた…拓人先生!…てゆーか、拓人の家、何ヶ月ぶりだろう。特にどこかに行く予定もないし…いいよね?そう思いながら後ろにいる拓人に向かって“OK”のサインを見せた。拓人はそのサインを見て微笑むとまた黒板に目を向ける。
テスト、どうしよう。
▲ ▼ ▲
案の定、屋上から教室に戻るとまだ顔が赤かったのか、天馬君たちに問い詰められた。結局、何も答えなかったけど。
そして、今日からテスト週間だということにさっき気付いた俺。先輩のことで頭いっぱいだったからな!てゆーかまず、テスト範囲知らねぇし?まぁ、威張って言うもんじゃねぇけどな。
先輩って賢いのかな…?神童先輩から教えてもらってたりしてるのか…?そう考えていくと、段々最悪な方向へと向かってしまう。俺って、こんなに嫉妬深かったっけ。
「神童先輩、賢くて羨ましー」
「武藤先輩もでしょー!!」
天馬君と信助君の会話にぴくりと反応する俺。
「え、武藤先輩も賢いの?」
そう聞けば2人が顔を見合わせた後、俺を見ながらにやにやしていくのが分かった。あ、ヤバい。
「えー。聞きたいのー?」
「…やっぱいいわ。」
俺はそれだけ言い、天馬君たちに背中を向けてその場を去ろうとした瞬間、天馬君に襟をぐいっと掴まれ、「まぁ、待ってよ狩屋…。俺たち友達でしょ…?」と黒い笑みで言われました。
いつからこんな子になったの。俺は黒属性の奴と友達になった覚えはない。
「…どこ行くの狩屋ぁー?」
「……。」
誰か助けて。この状況から。
「武藤先輩は賢いよ。と言っても、たしか学年20位以内だったけど…何か神童先輩と一緒に勉強してるっぽい…」
いつの間にか、近くに空野さんがいてそう言った。20位以内なのか…俺もだけど。
「…なのに、嘘は下手くそなのか…」
俺の呟いた言葉がみんなには聞えていたのか「嘘?」と、声を合わせて聞いてきた。
「え?あ、何でもない…」
「ふーん…? まぁ、頑張りなよ狩屋!」
天馬君の言った最後の言葉の意味がよく分からなかった。何を頑張れと。あ、テストか。
テスト週間…。週間中も武藤先輩に会えるといいけど…。
そんな、脳内テストのことと武藤先輩でいっぱいで平和な俺は、学校が終わって帰ろうとしていると武藤先輩がいた。神童先輩も一緒に。
「…狩屋?」
「神童先輩…」
「あ、マサキ君」
先に神童先輩の方に気付かれた。その後に気付いた武藤先輩は笑って手を振る。
「あれ、紗雪と狩屋、知り合いだったのか?」
神童先輩はきょとんとした顔でこっちを見ていた。そっか、俺と武藤先輩が接触してる時、神童先輩いたことなかったな。
「そうですね、知り合いですよ。…あ、今から2人とも帰るんですか?」
俺たちは並んで歩きながら話をした。先輩たちとは帰り道が途中まで一緒だから上手くいけば神童先輩と武藤先輩が別れたとき2人っきりになれるかな?…と、狙ったわけだ。だけど、そんな俺の予想は簡単に裏切られた。
「あぁ、まぁ、大体はそうだな…」
「今から、拓人の家で勉強教えてもらうんだ〜!拓人、賢いしね!」
!!?……勉強会って…何だよそれ…。笑って言う武藤先輩につくづく呆れそうになる。先輩、2人っきりはいろんな意味で危ないって気付いてないの?しかも、男の部屋で2人っきり、なんて。暴力とかも、振るわれたらどうすんだよ…。
てゆーかその前に神童先輩超普通の澄まし顔なんだけど。武藤先輩と2人っきりになってからがヤバいのか?…まぁ、普通に考えるとそうだろうな。
色々、話をしてるうちに神童先輩の家が見えてきた。やっぱ、いつ見てもでけぇ家だ。そう思いながら大きな家を見つめる。
「じゃあ…マサキ君もテスト勉強頑張ってね!」
「気を付けて帰れよ、狩屋」
「はい、失礼します」
そう返事をして、先輩たちと別れる。でも…やっぱり心配だ。そう思い、俺はケータイを開いてメールを打った。宛名は…武藤先輩。
To 武藤先輩
──────────
やっぱり神童先輩と2人きりなんて心配です。
本当に、何かあったら言ってくださいね…。
送信すると、いつも通り数十秒で返信が来る。安定の速さだな…と苦笑しながら急いで内容を見る。
From 武藤先輩
──────────
あ、そのこと全然考えてなかった…
まぁ、了解です。(`・ω・´)ゞ
ありがとね!
……………。はあ!!? 考えてなかった!!?馬鹿か!? アイツは馬鹿なのか!!?そのことでずっと悩んでた俺って一体何なんだ。ホントに大丈夫なら、いいんだけど…。
でも、少しでも先輩に出会えて良かった!!そう思い、その場で一息ついた。さて、家に帰るか…と、思った時。
「…あ。」
忘れ物をした事に気が付いた。いつもなら取りに戻らない俺だけど、なんせ今日からテスト週間だ。取りに戻らない訳にもいかない。あぁもう最悪。俺はくるっと回って家とは反対の方向に向く。
目指すは面倒臭いけど学校。目的はただの忘れ物を取りに行くだけ。溜め息を漏らすと、俺は学校へ向かってさっき通った道を引き返した。
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