神様はいない | ナノ

第二話 1/5
 ぜえ、はあ、と肩で息をする。普段と変わらぬ修行の量で、以前の倍ほど疲弊した。
 違和感は主に右手にある。チャクラを練ってそちらへ集約、そして放出。ぴりりと指先が痺れた。しかも練った量より放出できている量が少ない気がする。

 自分が有り難い話を即答できず、保留にしてしまった理由はこれだ。しかも原因がわからない。
 体力の衰え? それともチャクラ量の減少? もしや技術の精度が落ちたのだろうか?
 悩むも答えは出ず、修行を繰り返しても治らない。元より日々の鍛錬を怠ったことはないのにどうしてだろう。こんなところでつまづいている場合ではないのに。

 今日の午後、保留にしていた返事をすることになっている。遅くなってしまったが推薦を受ける覚悟を決めた。上層部からの命だ。元より拒否する気はない。ただ…少しの時間と、理由が欲しかった。

 大きく息を吸って、長く吐いた。吐き切る頃には肩の力が抜けている。ーーー大丈夫。この前こなした任務の疲れが少し残っているだけだ。まだやれる。上へ、上へと向かわなければ。

 額から流れる汗を腕で拭う。…もうそろそろ時間だろうか。重い足を引きずるようにして、指定された場所へと歩を進める。


…………


 扉をノックして反応を待つ。中から聞こえた返事を合図にして、ゆっくり持ち手を引く。その中にいた人物に少々面食らった。
 3代目火影様の前に立つのは、はたけさんだった。意識を火影様へと向ける。するとその険しい顔つきに、自分の話をするような雰囲気ではないことに気がついた。

「七瀬、すまんが返事を聞くより先に向かってほしい場所がある。今お前の隊の者にも連絡を取っておるところじゃ」

 ピリッと張り詰めた空気。何か問題が起こったことは明らかだった。

「任務でしょうか」
「うむ、西の森の方でなにやら爆発したような音が大きく聞こえたらしいのだが、確認にいった者たちと連絡が取れなくなってな」
「…何者かに襲われた可能性は、」
「大いにある。そこへは連携の取れたスリーマンセルで向かうことが理想じゃが、万一連絡がつかない場合も想定してカカシを呼んだ。10分後、表に集合しすぐに向かってほしい」
「はい、承知いたしました」

 拳を作り、ぎゅっと握る。気を、引き締めないと。そうは思うのに先ほどの鍛錬でのことが思い出される。

「そんな怖い顔しないの」

 トントンと肩を叩かれて、ハッとして顔を上げる。そこにはいつも通り、目尻を下げるはたけさんがいた。

「時間がないからね、とりあえず忍具や必要な物があるならすぐに揃えてほしい」
「はい、…いえ、修行するために色々と持ち歩いていたのでこちらは大丈夫です」
「相変わらず準備いいね。…じゃあ、行こうか」

 火影様へ頭を下げ、はたけさんと共に部屋を出た。



 10分後、自分の小隊のメンバーは集まらなかった。到着に時間がかかるらしい。急を要するので、彼らはあとで増援というかたちで落ち合うことになる。
 はたけさんとツーマンセル、か。今まで任務を共にしたことはないが、相当腕の立つ人だと聞く。足を引っ張らないようにせねばなるまい。

 出発の前に爆発のあった方角、状況の想定など必要事項を端的に確認して、それらを頭に叩き込む。

「ま! 大丈夫でしょ…みんなのお墨付きの上忍候補なんだし。あとは、そうだね、肩に力を入れすぎないこと」

 軽く肩を叩かれた。その温もりを確認するように手を添える。

「あ、痛かった?」
「いえ…行きましょう。わたしはいつでも大丈夫です」
「頼もしいね、…よし、行こうか」

 地面を強く蹴り、木の枝から枝へと飛び移る。ここから目的地まではそう遠くない。駆ける足に力が入る。それを適度に逃すように息を吐いた。
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