八重桜




『ソメイヨシノが終わると次は八重桜が見頃だねー』



窓の外、すっかり葉桜になってしまった桜の木に並んで1本だけ立つ種類の違うそれを眺めながらなまえが呟いた。

八重桜、というらしいその桜は一般的によく見る花とは明らかに違う。
葉の間に若干色の濃い多数の花弁を持つ花が咲いていた。



「へぇ八重桜っていうんだ、あれ」

『うん、そうだよ〜可愛い花だよね。で、私あれ見るといつも思うんだけどさぁ』

「何?」

『八重桜って…桜餅に似てない?ほら餡をピンクのもち米で包んだタイプの』

「桜餅…?」



言われてよくよく見てみれば、重なった花びらが全体的に丸い形を作っているのと間に見える葉とが合わさってそういう風に見えなくはないが…



「てか、結局花より団子かよ」

『なっ…違うもん!ただそう見えるなーってだけで…』



ぷぅ…と頬を膨らませて抗議するなまえだが、花を愛でるより団子…もとい桜餅に心魅かれているのは明らかだ。



「じゃあ帰りに桜餅買っていこうか」



そう言えば、俺の言葉にぱぁ…っと表情を変えた。


ホント分かりやすい奴。


まぁそんなところも可愛いんだけど。



『ツナっツナっ早く帰ろ!』

「そんな急がなくたって桜餅は逃げないって;;」



なまえに手を引かれて放課後の帰り道。


ふと移した視線の先には八重桜が風に枝を揺らしていた――――



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