8.涙の決断

ノアは残酷な指令に打ちひしがれながらも、
リディーに連れられて姉の魂の回収に向かった。
「仕事なんだからしょうがないじゃない」とか、
「これであんたは生き返れるんだから」と
リディーは心配そうにノアの顔を見ながら言った。
リディーはノアを慰めたつもりだったが、それが心ない言葉だとは気付かず逆にノアを傷つけてしまった。
「どうしてそんなこと言うの?ねえなんで?」
そう言って泣くノアはとても痛々しかった。
現世に降り立ち、指令先の病院の中に入ると、ノアはガタガタ震えだした。
もうリディーは「仕事だからしょうがない」と割り切っていた。
「ホラ行くよ、ノア」
リディーはノアの手を引き、ロゼルの病室の壁を通り抜けた。
そこで見た光景は…想像以上に悲惨なものだった。
全身チューブだらけで医師や看護師に囲まれてベッドに横たわるロゼル。
心電図の波形は今にも途切れそう…。
「お姉ちゃん!!」
ノアはリディーの手を放しロゼルのベッドのわきに座り込んだ。
そして透ける手でロゼルの手を握りこう言った。
「お姉ちゃん…ボクはお姉ちゃんを死なせるくらいなら生き返らなくてもいい。ボクの命、お姉ちゃんにあげるからボクの分までちゃんと生きてよね…」
ノアはもう片方の手で胸の十字架を握りギュッと目閉じた。
すると…
「ノ…ア…?」
ロゼルが息を吹き返した。それと同時に時間が止まった。
「ノア?ノアなの?会いたかった…」
「ボクもだよ、お姉ちゃん…」
2人は泣きながら抱き合った。
「お姉ちゃん…せっかく会えたんだけどもうボク行かなくちゃいけないんだ…。」
そう、命のカケラを譲った死神は光の粒となり天国に連れて行かれる。
ノアの体はもう金色の光に包まれ、透けかけていた。
「ボクの分まで長生きしてね。そうすればまた天国で会えるからさ…」
「嫌、そんなの嫌よ!ノアァーー!!」
ロゼルは滝のように涙を流し泣いた。
「ノアのバカ!!これであんたは生き返れるはずだったのに…!何で?どうしてよ!?」
リディーも涙ながらに言った。
そんな2人にノアは泣き、笑いながら手を振り消えて行った。


お姉ちゃんの弟でボク、とっても幸せだったよ…

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