6.記憶の泉

「ねえ、リディー、ここから先は入っちゃダメなんでしょ?」
「うるさいなー。って言うかマントつかまないでよバカノア!」
次の日の夜、ノアたちは、立ち入り禁止の看板を超えて死神の森の奥へと向かっていた。
コウモリたちがバタバタと飛び交い、なんとも不気味な路地を抜けたと思ったら、
開けた美しい泉へとたどり着いた。
「わあ…キレイ…」
「何見とれてんのよ、いいからこの泉を見なさい」
ノアがのぞきこむと、満天の星空を映していた水面がゆがみ始め別のものを映し出してきた。
「これ…僕だ!もう一人は誰…?」
以前夢に見た、金髪のショートヘアの女の子が映っていた。
そしていつの間にかノアの頬を涙が伝っていた。
「ねえ、リディー、これはなあに?この人は誰?」
「この泉はね…私たち死神の生前の記憶や現世を映し出すの。私もここでパパとママのことを思い出したわ…」
「じゃあ僕も…?」
ノアがマントで涙をぬぐいながら聞いた。
「そう、きっと思い出せるわ」
リディーが笑顔で答えた
「でも本当に少しづつしか思い出せないの。
だからノア、本当に生前の記憶を取り戻したいのなら毎晩ここへ通いなさい…」
それからというもの、ノアは仕事が終わるとすぐに泉へ通うようになった。
泉はノアを楽しませ、ときに苦しめたりもした。
両親がもういないことはノアにとってとても悲しいことだった。
そして自分に姉がいること、孤児院暮らしだったことを思い出した。
毎晩のように姉と二人で脱走し、河原でホタルと戯れたり、大きな木の前で写真を撮ったことなど、たくさんのことを思い出した。
でもいつまでたっても1つだけ、思い出せないものがあった。
それは…

「お姉ちゃんの名前…」

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