5.死神になった少年

ある日の午後、リディーとノアは魂の回収のため、人間界へ降りていた。
「グスッ、ヒック…」
ノアは毎度のことで、泣いていた。
「ばーか」
「言ってろこのチビ!」
2人は今回の仕事場へと向かった。
「えーっと、今回はミック=クローリー交通事故で死亡か…」
「えっ?交通事故?」
なぜだろうか、ノアはこの言葉を聞くと胸がざわつくような感覚を覚えるのだ。
「このあたりのはずなんだけど…。あっあの子かしら?」
河原で小さな男の子が花を摘んでいた。
そして、河原から道路へ出た途端…。
「あっ、危ない!」
ドンっ
男の子はトラックに轢かれてしまった。

ほんの一瞬のことだった。

即死―。
死神である以上、何度もこのような光景を目にしなければいけない。
それは自分でもよくわかってるつもりなのに…
「うっ…」
あまりの痛々しさにノアは両手で目を覆った。
男の子の体から魂が出てきて
「うへぇ、転んじゃった。お花無事かなぁ?」
と頭をさすりながら言った。
男の子は自分が死んでることに気付いていないみたいだ。
「ねえ」
とリディー。
「お姉ちゃん、だぁれ?」
「死神よ。あなたを迎えに来たの。」
「…どういうこと?」
「ううっ…君はね、死んじゃったんだよ…。ホラ、見てごらん」
ノアが泣きながら指をさした先には頭から血を流している男の子の亡骸があった。
「おい、ぼうや、大丈夫かい!?しっかりしてくれよ、なあ!!」
トラックの運転手と周りの人たちがもう冷たくなってしまった男の子の亡骸を囲んだ。
「えええええっ!?そ…そんなぁ!
ボク、これから病気のママにお花をあげに行くところだったのに…」
男の子は泣きだした。
「大丈夫、怖くないよ。僕たちが天国まで連れてってあげるから…」
そう言いながらノアは魂の糸を鎌で切った。
と、その瞬間―――
「嫌だ!ボクはママを守るんだ!このお花あげるんだもん!」
男の子の体が金色に光った。
「なによ、コレ…」
光は男の子を包みこんで見る見るうちに死神に変えていった。
「死神に…なった?」
光が消える頃には男の子はもうすっかりノアたちと同じような死神の姿になっていた。
「ボクは…ミック。死神だよ。君たちは…だあれ?」
「え…ミック、君、自分のこと覚えてないの?…うぁああぁ!」
「ノア!?」
ノアは頭に雷でも落ちたかのような痛みを覚え地面を転げ回った。
「痛いよ!助けて!助けてお姉ちゃん!」
「ノア!?ノアってば大丈夫!?」リディーが珍しく心配していた。
死神界に戻った後、ミックは先輩の死神の子に引き渡された。
そしてノアは自分が言ったことに疑問を抱きながらベッドで横になっていた。
「お姉ちゃんってだれだ?僕にはお姉ちゃんがいたのかな…?もしそうだとしたらどんな人なんだろう…?」
そして考えれば考えるほどわからなくなっていくようだった。

「ノア…?」
リディーがノアのもとを訪ねてきた。
「気分はどう?」
リディーはいつになく優しかった。
「もう、大丈夫だよ」
本当は頭がまだズキズキしていた。
「そう、よかった。あのね、ノア、来てほしい場所があるの。
でもその前に確かめたいことがあるんだ。」
「何?」 「ノア、ミックの件で倒れた時お姉ちゃんって言ってたよね?
もし、ほんとうにノアにお姉ちゃんがいたとしたらその人のこと、知りたい?」
「…知りたい」
「よかった。じゃあ今日は無理そうだから明日の夜、私についてきてね」
「…わかった」
すると急にいつものリディーになって、
「全く…!まだ調子悪いのバレバレなんだからね!頭押さえて痛いよぅって…アハハハハ」
リディーは笑いながら去っていった。

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