5.14歳

14歳の誕生日――「ハッピバースデートゥーユー」の歌の後、私たち双子は一緒にローソクの火を吹き消した。
パパとママ、そしてピーターや学校の友達を招いての誕生日パーティ。
1年の中でも一番大好きな日…。私たちは14歳になった。
「ねぇパパ、プレゼントは?」
「ああ、もちろんあるよ。はい、こっちがアビィのでこっちがニコルのだ。約束していたお揃いのワンピースだよ」
手渡された包みを開けると可愛いリボン付きのグリーンのワンピースが入っていた。
お姉ちゃんのは真白でドレスのようだ。
「もうっ!色もお揃いにしてって言ったじゃない、パパったら…」
と私がだだっ子っぽく言ってみると、
「いや、お前たちそれぞれの髪と目の色に映えると思ってな。ホラ、アビィは赤目だから赤いリボンがよく似合うだろう?」とパパが言った。
確かに――そうかもしれない…。
まあお姉ちゃんも喜んでるみたいだしいいか…。
私はすぐに忘れてパーティを楽しんだ。
 夜、パーティも終盤になったころ、私はトイレに行きたくなってクライン家の長い廊下を歩いていた。
と、急にかすかな話し声が聞こえた。私は話し声が聞こえる部屋のドアを小さく開けてのぞいた。
そこにはピーターとお姉ちゃんがいた。
「ねぇ、どうして私じゃダメなの?」
「君は確かに素敵だよ。その銀色の髪も真っ赤な瞳も大好きだ」
「じゃあどうして?私は…私はこんなにあなたのことを愛しているのに…」と泣き崩れるお姉ちゃん。
「…ごめん。いくら双子で同じ顔でもボクの初恋の人はニコルなんだ。だからこれでゆるして…」
ピーターはそう言うとお姉ちゃんのほっぺにキスをした。
ピーターがこっちに向かってくる…。早く隠れなきゃ。
私は素早く隣の誰もいない部屋に隠れた。
…そうか、お姉ちゃんもピーターのことが好きだったんだ…。
隣の部屋でお姉ちゃんが泣いてる声がする。
何で…何でもっと早く気付いてあげられなかったのだろう。
私の幸せなんていくらでもお姉ちゃんにあげる。
お姉ちゃんの幸せが私の幸せなのに…。
私は恋人という甘い存在に浮かれたいた自分を呪った。

次の日あたりぐらいだろうか、お姉ちゃんの様子がおかしくなり始めたのは。
初めはブツブツ独り言を言うだけだったのにだんだんそれもひどくなって、しまいにはカミソリで自分の腕を切るようになってしまった。
私が「何でそんなことするの…?痛いでしょ?」と言うと、虚ろな目で笑っては
「痛くなんかないわよ…。こうしてるとね、落ち着くの…」と言った。
そして次第にそれもなくなっていき、ついにはベッドで寝込むようになってしまった。
私が学校から帰ってきても「お帰り」も言ってくれないし何も話してくれない…。
ただただ、ベッドで虚ろな目をして横になってるだけ…。
そんなお姉ちゃんを見てると私は悲しくなった。
お姉ちゃんをこんな風にしてしまったのは私のせいだ…。
そう思ってただひたすらに自分を責めた。

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