4.初恋

13歳のある日――「ねぇ、ニコル、ボ…僕と付き合ってくれないかな…?」
「えっ!?」
学校の門を出て家に帰ろうとすると隣にある男子校のピーターと言う男の子が話しかけてきた。
ピーターとは私の通うお嬢様学校とその隣にある名門男子校が共同で開催したダンスパーティで会って以来だ。
そういえば一緒に踊ったかしら…。
「あの…えと…その…あのとき君に一目惚れしちゃって…。ねぇ、ダメかな…?」
恋愛か…顔も悪くないしいいかもね。
「え…ええ、いいわよ」
言ってしまった。
「本当に!?やったぁ!!!」
すかさずピーターがこう叫んだ。
私は笑った。ピーターも笑った。

 それからというものピーターは学校の帰り私の家まで付いてくるようになった。
いつも門の前までおしゃべりして「じゃあね」と手を振って別れた。
そんな私たちの様子をお姉ちゃんも見ていたらしい。
「あの男の子は誰?」
「えっ、ピーターのこと?私のボーイフレンドよ」
「ふーん、やるじゃないニコルったら!」
「やめてよお姉ちゃんてば!告白は向こうからだったのよ。私は話に乗ってあげただけよ」
「それにしては楽しそうだったじゃないの。あっそうだ、今度あの子、家に入れてあげなさいよ」
「うーん、考えとく」
「もーっニコルったら!!」
そんなことを話しながらキャアキャアはしゃぐ。
きっと双子にしか出来ないことだよね。
 そしてピーターが家に来る日。私はなんだか落ち着かなかった。
髪の毛は乱れてないかしら?この服変じゃないかしら?
鏡の前でそわそわする私をお姉ちゃんはただ笑った。
 ピンポーン!玄関のチャイムが鳴る。
ドアを開けるとバラの花束を持ったピーターが緊張した顔で立っていた。
「や、やあニコル」
「ハーイ、ピーター、いらっしゃい」
「こちらへどうぞー」
「ど…どうも…」
ピーターを客間に通してしばらく他愛のないおしゃべりが続いた。
でもしばらく経つと話題もなくなり、気まずい雰囲気が流れ始めた。
そんなとき…。
コンコン、というドアをノックする音。
「どうぞ」と私が言うと、お姉ちゃんがお茶とお菓子を持って入ってきた。
「初めましてピーターくん。ニコルの双子の姉のアビィです」
お姉ちゃんは自己紹介をするとニコッと笑った。
「ど…どうも、初めまして」
ピーターの顔が赤くなっている。
突然の双子の姉登場に驚いたのだろうか。それとも…。…ううん、そんなこと考えちゃダメ。
「ありがとうお姉ちゃん。ねぇ、よかったら一緒にお茶しない?」

「あら、そんなの2人に悪いわ…」するとピーターが 「どうぞ座って下さい。お姉さんともお話してみたいです」と言った。
 それから2時間くらい私たちは3人で楽しくお茶をした。
ピーターはお姉ちゃんの外見が珍しかったのだろう。
じーっと見つめては目を伏せ、を繰り返していた。
でもあえてその外見について聞くことはなかった。
 そしてピーターが帰る時間。
「今日は楽しかったよ、ありがとう。あの、よかったらコレ…」
「まあ、ありがとう」
それは来たときに持っていたバラの花束だった。
「それじゃあまた!!」
こういうのに慣れていないのだろう。ピーターはまたもや顔を真っ赤にして帰っていった。
「カワイイじゃない、彼」
「そうかしら?」
私はこのときお姉ちゃんの気持ちに気付いてあげられなかった。
いや、気付くべきだった。
そのことを私は後々後悔することになる。

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