2.日影の花

5歳の頃――「ねぇママ、私もニコルと一緒にお外で遊びたい」
「ダメよ。あなたは外に出てはいけないってお医者様に言われてるのよ。それにあともう少しでピアノの先生がいらっしゃるわ」
「…はい…」
「ねぇねぇお姉ちゃん見て!キレイなお花だよーっ!」
私がそう言うとお姉ちゃんはガラスの窓の向こうで寂しそうに手を振った。
そう…お姉ちゃんはお日様に当たると病気になってしまう体…。
外に出られないお姉ちゃんはいつもお家の中で勉強ばかりさせられていた。
私は欲しいものは何でも買ってもらえて好きなだけ遊ぶことができたけど、お姉ちゃんのことを考えるとそんなのちっとも嬉しくなかった。
私はお姉ちゃんとお揃いがいいのに…。

 7歳の頃――「わーいっランドセルだっ!パパ、ママ、ありがとう!」
「素敵よ、ニコル」
「よく似合っているぞ、ニコル」
小学生になる頃、私はランドセルを買ってもらった。お嬢様学校指定のランドセルはキレイな茶色でかっこ良かった。
姉と共同の自室に戻っても嬉しくて何度も肩にかけては鏡を見た。
そんなとき…
「あれ?そういえばお姉ちゃんのは?」
「私は…学校には行けないの…。」
そう言うとお姉ちゃんはわっとその場で泣き崩れた。
「どうして?どうしたの、お姉ちゃん」
「マ…マがね、アビィはお外に出ちゃダメだからっ…学校にも行っちゃダメなんだって…。」
「えっ?じゃあお勉強はどうなるの?」
「家庭教師の先生を…特別に雇ってあげるからっ…安心しなさいって…。でも…私もニコルと一緒に学校に行きたいよぉぉ…」
ショックだった。お姉ちゃんと2人で一緒に学校に行くことは私も待ち望んでいたことだったから。
泣くお姉ちゃんを見ているうちに嬉しさはどこかへ吹っ飛び、気が付くと私も泣いていた。
2人で泣き疲れて眠るまで泣いた。

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