▼ 初夏の記憶
追記:初夏だと言ってるのに、梅雨明けという表現が多々出てきます。すみません、後から気づきました。改変すると話自体変わってしまうので、このままでいきます!!!以後気をつけます!
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じめじめとした季節が漸く終わりを見せ、初夏になろうかというこの時期。
廊下で庭先を眺めながら、何か忘れているものがあるような気がしてならないのだが…。と斉藤は思案に耽っていた。
「斉藤さん?どうかなさいましたか?」
たまたま通りがかった千鶴が、小首を傾げつつ訪ねてきたが…これは千鶴に聞いてもわからぬことではなかろうか、と思いつつ話のタネにでもなればと思い切って尋ねてみる。
「…俺は何か忘れているような気がするのだ。千鶴、思いつくか…?」
「斉藤さんが忘れているもの…ですか?うーん…」
千鶴は首をますます傾げ、唸りだしてしまった。
俺も何を忘れているのか、必死に思い出そうとするが思いつかぬ。
「最近まで梅雨でしたから、洗濯物とかですかね?」
「いや、洗濯物は昨日粗方干してしまったが…。…梅雨?」
「ええ、梅雨明けですね!もう初夏って感じです!」
「初夏…!!」
そうだ、初夏ではないか。初夏と言えば総司の誕生日だ。
何故忘れていたのだ…!昨年、総司の誕生日を忘れていて嫌と言うほど、ネチネチと言われたことを思い出す。
((一くんは僕のことなんてどうでもいいんだね。今日は僕の誕生日だっていうのに忘れてただなんて酷いよ。))
あれほど苦い思いをしたことはなかなかない。それからしばらくはずっと言われ続けたものだ。
「初夏…?」
「あぁ、総司の誕生日がある。すっかり忘れていた。」
「そうなんですか!?お祝いしないとっ!」
千鶴はそう言って、お祝いする段取りを他の者とするらしくパタパタと忙しそうに廊下の奥に消えて行った。
さて、俺は今年こときちんとお祝いするために誕生日にあげる物を何にするか。
いざ、考えると総司に何をあげれば喜ぶのか…悩みどころだ。
巡回がてら、町を周り考えてみるかと外へ出るため玄関へ向かった。
***
誕生日当日。
総司の周りには色々な人から貰ったであろう品物が点在している。中には高価そうなものもある。そんな中に俺がこんなものをあげても良いものか、と今になって渡すのに戸惑う。
「…?一くん?入らないの?ずっと突っ立ってないでさ、早く入っておいでよ」
総司の部屋の前でうろうろとしていると、等々本人から声を掛けられてしまった。傍から見ると不審者に見えていただろう…。それほど挙動不審だったのではないかと思う。
「…っ、あぁ、邪魔する」
「どうしたのー?キョロキョロして、さ。今日の一くんおかしいよ?」
総司のやつっ、わかっていて言っているな。
にんまり、と音が付きそうな笑顔を向けながら言っていては何か言うことあるでしょー?と言っているようなものだ。
「ぐっ…、た、誕生日おめでとう…」
「ふふっ、ありがとー」
視線を総司から逸らし、どもりつつ、ちらりと見るとにこにこと笑う総司が居た。
本当に嬉しそうな顔をされては、文句は言えぬ、な。
「あと、大したものではないが、…これ。」
すっと、懐から包み紙が巻いてある手のひらサイズのものを出す。
そして、総司の手に乗せ、開けてみろ、と促す。
包み紙を開けると、中身は…
「っ!!高級金平糖!!!!これっ、結構高くて手が出せなかったんだよねっ」
女子のように顔を綻ばせる。
このような総司を見ることは滅多にない。一時は、こんなものでいいのだろうかと不安にもなったが、この反応では喜んで貰えたようで一安心だ。
「ありがとう一くん!!あぁ、食べるの勿体ないなー、でも食べたい」
「食べればいいだろう。それは総司のものだ。」
「そうなんだけどっ!あっ、じゃあ、一くんも食べよう?」
「いや、俺は…っ」
コロンと俺の口に入ってきたのは甘い金平糖。仄かな甘さはさすが高級と言ったところか。
「んー!美味しいっ」
「そうだな。」
「こんな美味しい金平糖が食べられるなら、毎日誕生日でもいいなぁ」
「誕生日は一年に一回だ。…来年もきちんと祝う。」
「うん。ありがとう。楽しみにしてる」
こんなに上機嫌なあんたを見られるなら、来年だって再来年だって毎年きちんと祝う。
そう約束しよう。
END
Happybirthday!総司
具体的には誕生日がわかっていないようなので、
初夏らへんにしときました。
SSLでは双子座となっていたようですが、もしそうなら同じ星座です(笑)
はじめてあとがき書きました。ここまで読んでくださりありがとうございますっ
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