▼ 悪戯は突然に
「「「ハッピーハロウィーン!!」」」
こうやって、みんなでワイワイ集まるのも楽しいなとジュース片手に眺めていると、千鶴ちゃんが恥ずかしそうにしながら、一人ひとりにお馴染みの合言葉を掛けているのが見えた。
やっぱり、ハロウィンと言えばこれだよね。
「Trick or Treat!」
「お菓子くれなきゃ悪戯するぞ。か、千鶴ちゃんはどんな悪戯してくれるのかな?」
「沖田さん!」
そっと千鶴ちゃんの後ろへ周り耳元で囁いてみると、予想通り顔を染めて驚いてくれた。
その反応が面白いし、可愛いんだよね。
千鶴ちゃんが話しかけていたのは平助くんと一くん。
二人共純粋だからなぁ。
ここは誂うべきでしょ、やっぱり。
「二人は千鶴ちゃんにどんな悪戯してもらうの?こーんな可愛い格好した千鶴ちゃんだよ、やましい事の一つや二つは浮かぶでしょ、男なら」
「な!? そんなことねーし!! 何言ってるんだよ総司!!」
「総司、千鶴の前で何を言っている!」
ほーら、掛かった。
この二人は誂うと面白いからやめられない。
誂うなら土方さんもいい勝負で面白いけどね。
ま、二人以外でも狼狽えている子がいるけどね。
総司と二人の間でどうしていいかわからず、口を金魚が酸素を求めているようにパクパクと開け閉めしている千鶴。
見ているのは楽しいが、流石に可哀想になってきたので冗談だよ、ジョーダン。と訂正すると、あからさまにほっとした雰囲気を出す千鶴に苦笑を漏らす。
今まで、ガヤガヤを喚いていた二人もその千鶴を見て安堵したようで大人しくなった。
つい、面白くないなぁと漏らすとそれを聞いた一くんが近寄ってきた。
「総司、では、Trick or Treat」
「え? 一くんが言うの、それ。まあ、お菓子ならここに飴が…」
ズボンのポケットから出した飴を掌に乗せて、差し出そうとするとその右手首を掴まれた。
掴まれた右手と掴んだ本人を見比べること数秒間。
――何してんの一くん…?
「お菓子より、悪戯がしたいのだが」
手首を引かれ、耳元で囁かれる甘くて程よい低音。
それだけで腰砕けにされそうで、どうにか踏ん張ったが、不意打ちは卑怯だと思う。
「あ、飴! あげたでしょ!」
「もちろん飴も貰うが、総司も欲しい」
「何言ってんの!?」
千鶴と平助が聞いてなくてよかったと心底思った。
少し遠くで二人、楽しそうに会話しているのがチラリと見えた。
他のみんなもそれぞれ楽しそうにパーティーを過ごしているようだ。
「ふっ、みな聞いてないと思うが」
「このっ、確信犯」
「先程誂ってきた仕返しだ」
負けず嫌いめ。と罵らずにはいられない。
本当の悪戯は夜に、な。という一くんに負けないんだから。と宣戦布告した。
夜、どうなったのかはご想像に任せるけど、僕も負けてないから。
負けなんて認めない。一くんの馬鹿。
2015.10.27
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