「わぁー…綺麗…」

「寒くない?」

「…寒い」

「じゃあ、はい」



私に向かって手を差し出すのは篤志さん。

遅番をきっちり定時で終えた私は、そのまま走って駐車場へ行った。

車で待っててくれているであろう篤志さんのもとへ。

コンコンってドアを叩くと篤志さんが驚いた顔で車から降りてきた。

目をパチくりさせて私を凝視している篤志さんの胸にふわりと飛び込む。



「マジで俺を選んだの?え、マジで?」

「選んでって言ってたのに?」

「言ったけど、さすがに俺より若くてかっこいい男には勝てないかなぁーって」

「あは、外見の問題ですか?」

「だって、かっこいいでしょ、黒沢も田崎も…」

「え?知ってたの?」

「そりゃね。恋のライバルぐらいは俺でも把握してたって」



戸惑いながらも私を抱きしめ返してくれる篤志さんの優しい温もり。

ずっと我慢していたこの温もり。

ずっと欲しかったこの温もり。



「顔だけなら哲也さんが一番ですって、」

「ちょっと待って!あーそこかー。そこは気にしてなかったわー俺…まぁでもそうだよね、哲也さんの眼鏡の下の顔って男の俺でも興味あるもん…」

「篤志さん!哲也さんはいいから…私のこと見て?」



顔をあげると篤志さんと目が合った。

ちょっとだけ照れたような篤志さんの顔をじっと見つめると「ずーっと見てた。これからもずーっと見てるよ」そう言うと今度は篤志さんの方から私を抱き寄せた。





「ねぇ俺の決めてってなに?」



二人でイルミネーションを見ていると篤志さんが待てないって顔でそう聞いてきた。

年上なのに子供っぽい篤志さんは果てしなく可愛い。



「強くて優しいところ」

「やっぱ顔じゃないかぁー!」



小首を傾げる篤志さんにクスっと微笑んだ。



「顔も好きです、篤志さんの中身が全部顔に出てるから。どんなイケメンも篤志さんには勝てないですよ!」

「ほんと?それすげぇ嬉しい!」

「篤志さんは?私なんかのどこがいいんですか?」

「…いつも頑張ってるところ。一生懸命で。最初は担当セクションだからって思って見てたけど、いつの間にか恋してた。あとその笑顔!よく笑うその笑顔がめちゃくちゃ可愛い。ずっと見ていたい…」



スッと頬に触れる篤志さんの手。

大きなクリスマスツリーの前はカップルだらけで、SNSに載せる写真を撮っていたりただ抱き合っていたりで誰も自分の相手以外なんて見ていない。

こうして顔を寄せて話せるのも今日に限ってなのかもしれない。




「私も…ずっと見てます。優しい人はたくさんいますけど、優しいからこそ強くいられる篤志さんが…大好きです!」



篤志さんとだったらこの先の未来を不安に思わない。

私が立ち止まったら、一緒に立ちあがれるように手を差しのべてくれるだろうって…―――篤志さんだけがそう思えたんだ。



「あーやばい、俺の理性がどんどん崩れていく…サクラちゃんキスしたくない?」

「…したいです」

「しちゃう?」

「してください…」

「いいの?人いっぱいいるけど」

「誰も見てませんよ。それにほら、」



反対側に視線を送る私、視線の先はさっきからチュッチュッしてるカップル。

てゆうか、右も左もそんなんばっか。



「問題ねぇか!」



クシャって笑った篤志さんが私の顔を覗き込むように近づいて、そっと唇が触れた―――


同時に、篤志さんの温もりに抱きしめられて…―――

背中に腕を回すと、ほんの隙間を作る篤志さん。

薄目で見つめるのは私の唇で…

そっと唇を開くと、フって鼻息がかかった後、ニュルって舌が入り込んだ。

口鬚が当たってくすぐったいけど、絡める舌は止められなくて…

篤志さんの香りと温もりを強烈に浴びながら、何度となく甘くて濃厚なキスをしたんだ―――




幸せの計りなんてもんは全部自分次第。

この広い世界の中で、たった一人、篤志さんだけが私を満たしてくれる愛する人です。

素敵なクリスマスを…

メリークリスマス☆





*END*

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