「最近黒沢と仲良いんだって?」



シフトを終えてスタッフルームでミルクティーを飲んで一休みしていた時だった。

今日は時間があるから映画でも見ようかなって思っていて。

そこにやってきたコンセ(コンセッション=売店スタッフ)の大学生バイトのタカヒロ。

これからシフト?

私を見てそんな一言を発したんだ。

クリスマスシフトは私も3日間遅番にした。

アキラくんに合わせたつもりはないけど、結果的にはそうなった。




「タカヒロ?なにそれ」

「噂。なんかやだ。ねー映画見ない?俺見るから一緒に見ようよ?」

「え?うん…」



なんかやだ?って!?

カチッと煙草に火をつけて衝立の奥にある喫煙スペースのソファーにドカッと座ったタカヒロは今年卒業の4年生だから一緒に過ごせるのもあと数ヶ月。

うちのバイト君たちはみんな仲もいいから正直寂しい気持ちは大きい。



「よし!何見る?」



煙草を灰皿へ置いて私の制服のポケットに閉まってあったショースケジュールを奪ってそれを見る。

アキラくんみたいな至近距離に内心ドキンとする。

タカヒロ、顔がかっこいいから困る。

それを分かっているであろうタカヒロは、さり気なく私の肩に手を添えて「これにする?」選んだのはまさかのホラー。

げ、絶対やだ。



「無理無理。お風呂入れなくなる!」

「一緒に入ってやるよ!」



そう言いながらもタカヒロの手は肩から背中に移動して…



「ちょっとなに?」

「ん?」



パチンと制服の上から片手でブラのホックを外したんだ。

途端に背中に違和感を覚えて。



「こらー!またそーいうことする!全く!」

「いーじゃんこれくらい!減るもんじゃないし!ほら、着替えやすくなっただろ?ここで待ってるから早くきがえておいで!」



…そうやって頭ポンポンするタカヒロはずるい。

このアメとムチにドキドキしているのは間違いなかった。

ただでさえイケメンなのに、そーいうことされると色々気になっちゃうんだかやめてほしい。

内心ドキドキしながらも私は素早く着替えてタカヒロの待つスタッフルームへと行った。

それから2人でオフィスに戻ってスタッフ鑑賞の紙を記入した。

それにマネージャーのサインを貰ってシネマ入口へと更に歩く。



「あ、何か奢ってやるよ!ポップコーン食う?ジュースもつけてやる!」

「わーい、たかぼーかっこいい!」



そう言って腕に抱きつくとギュッと抱きしめ返される。



「だろー!付き合う?付き合っちゃう?俺優しいよ?えっちもうまいし!」



ぶっ!!



「それ自分で言う?そこ売りなの?」

「当たり前だろ。男なんてみんなそれしか考えてねぇだろ!」



堂々と下ネタを暴露するタカヒロはある意味気持ちがいい。

エロで有名なタカヒロにポップコーンとジュースを奢って貰った私はそのまま2人でシネマ入口でスタッフ鑑賞の紙を晒す。



「サクラはい」



そこにいたのはアキラくんで。

タカヒロはわざわざ見せつけるように私に手を差し出す。

え?握れって?



「ちょ、タカヒロ…」



躊躇う私の手を強引に握って入口を通過していく。



「サクラ!寒いからこれ!」



そんな私を追いかけてきたアキラくんは入口に置いてあるブランケットを私に渡す。



「ありがとう」

「気をつけろよ」



ポンって頭に手を乗せられる。

小さく頷いたものの、何に気をつけるの?

え?振り返ろうとした私の手を更に引っ張るタカヒロは「黒沢、ムカツクな〜」って小さくボヤいたんだ。



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