言葉通りに安全運転してくれている寺辻くん。
思う以上に怖くはない…――――けど…違う意味でドキドキしている。
あたしの方からカレに抱き着いているっていうのもあるけど、腰に回した手をギュっと上から重ねていてくれて…それだけで十分ドキドキしてしまうよ。
しばらく走っていると「やべっ!」寺辻くんの少し焦った声が聞こえた。
「ユヅキちゃんごめん、思いっきり俺にしがみついてて!!ちょっとだけスピードあげる!」
「えっ!?」
そう言った時にはもう、吃驚するぐらいのスピードが出されていて、目を閉じて寺辻くんの大きな背中に力の限りしがみつくしかなかった。
後ろで聞こえる違うバイク音。
それが誰なのかあたしにはさっぱり分かるわけもなく…
「クソッ、しつけぇなっ!」
…口調が違う…。
この人たち、本当の本当に不良なんだって実感してしまう。
「俺を舐めんなよっ、ボケが――!」
「ひゃあああ―――」
バババババババババ………
グイン、グイン細い道を徐行運転して行く寺辻くん。
さすがにこの細道まではついてこなかったようで、しばらくしてゲームセンターの前でバイクを止めた。
軽く方針状態のあたしを振り返って「ごめんね」そう謝る。
その姿も口調もさっきまでの寺辻くんからは想像もできなくて…
「…なんだったの?」
ほんの少し震える声でそう聞いた。
苦笑いを浮かべながらも、あたしの手をギュっと握った。
「敵対してるチームの下っ端。俺のバイクに気づいて追ってきて…でも巻いたから大丈夫だよ。ここは俺らの縄張りだから、ここには入ってこれないから!」
「縄張り?」
「…あ―…まぁ、一応そういうのがあるらしくって…」
曖昧に答えるのは、不安そうなあたしの顔色を伺いながら…ってのが見え見えで。
「ごめん、怖いよね?こんな俺…でも嬉しかったんだ、ユヅキちゃんの告白!だから、嫌いにならないで欲しい…」
ドキン。
あたしなんかに頭を下げる寺辻くん。
本当は哲也くんが好きなの…
そう言うつもりでいたのに、そんな風にされたら言いづらいよ。
見つめる瞳はどうしてか泣きそうで…
自分の気持ちまでもが揺らめいてしまうんだ。
「うん」
気づいたらそんな言葉があたしの口から飛び出していた。
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