「はぁ―――!? 間違えたっ!?」
お昼休み終了のチャイムが鳴る前に、ドッと疲れたような顔で教室に戻ったあたしに、早速告白の結果を聞こうとユナが近寄ってきた。
だからお望み通りユナの耳元でこそっと呟いたんだ。
「告白する相手違えて、しかもOKされて付き合うハメになった」
寺辻くんからしてみれば、何ともふざけた回答であろうこの言葉に、耳が痛くなるんじゃないかってくらいに大声を上げるユナ。
「シー! シー! シー!」
人差し指を口元に当ててユナに近寄るあたしに、乱れた呼吸を大きく吸い込むユナ。
まさかの結果に、そりゃユナだって驚くだろうとは思っていたけれど、そんなに叫ばなくても…。
自分のバカさ加減に泣きそうになった。
「間違えたってユヅキ…。ふざけすぎでしょ…。で、土田じゃなくって…誰に告白したの?」
「ああ、え〜っと…寺辻くん」
「あちゃー…。あんなアホみたいな不良に…。OKされたって…」
「…喜んで付き合う! って言われて、放課後迎えに来るって…」
「どうするの?」
「どうしよう?」
もはや自分で決める選択肢もなにもなく、あたしは放課後をどう迎えようか考えても考えつかなくて…。
呆れたようにユナは大きくタメ息をついていて、知恵も何も貸してくれそうもない。
どうしてあたし寺辻くんの手、握っちゃったんだろう?
同情? 罪悪感?
でも結局あたしが真実を言わなきゃダメなんだよね。
本当は哲也くんに言うつもりだったって…。
うん、よし!
放課後言おう!!
ちゃんと誠意を持って寺辻くんに謝ろう!!
「ユヅキちゃんあの、寺辻くんが呼んでるよ…」
ポンっと肩を叩かれて、あたしは6時間目の授業が終了していたことに気付いた。
そしてあたしを呼びに来てくれたクラスメイトに苦笑いを飛ばして、廊下にいるであろう寺辻くんに視線を移す。
あたしに気づいたカレは、嬉しそうに手をぶんぶん振って笑顔をくれる。
その笑顔にあたしはつい手を振りかえしていて…
「ユヅキ! のん気に手振ってる場合じゃないよ」
ユナがピシャリとそう言ってハッとする。
思わず寺辻くんの空気に、寺辻くんのペースに流されかけたのかも、あたし。
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