最高にやばいパターン



「マジ? すっげぇ嬉しい! 喜んで付き合う!」


そう言われて「あれ?」違和感を感じた。

顔を上げたあたしの目の前にいるのは、哲也くん…


























…―――じゃなくて、まさかの寺辻健一郎で。

これは、最高にヤバイパターンなんじゃないだろうか!?


「ケンチよかったな!」

「彼女一号かよ!」

「結構可愛いんじゃん?」

「ケンチには勿体無いんじゃねぇ?」


あたしを残したまま、勝手に盛り上がるメンバー達。


「まじよかったなぁ、ケンチ!」


哲也くんまでもが、寺辻くんの肩に腕を回してそう笑う。

その、嬉しそうな顔に…


「えっと、名前教えて?」


ニコニコ笑顔の寺辻くん。

どうしよう…

告白する相手間違えましたなんて、絶対に言えそうもない。

だって、寺辻くん…喜んでくれてる。

哲也くんにはフラれるもんかと思っていたから、OKの時のシチュエーションなんてとうてい考えていない。


「あの、あたし…」

「うん? あ、当てろって?OK!OK!う〜んと…ユヅキちゃん」

「えっ!」

「ユヅキちゃん、正解?」

「はい」


なんで?

あたしの名前…

なんで知ってるの、寺辻くん。


「俺、健一郎だよ」

「や、お前さすがにそこは知ってて告ってるだろ!」


哲也くんが突っ込みを入れて…

どうしよう、言えない。

とてもじゃないけど言えない。


「携帯、教えて?」


優しくそう言われて、あたしはハッとした。


「あの教室に置いてきちゃって…それであの取りに行ってきます」

「いいよ、いいよ。そしたら俺放課後迎えに行くね!」

「…はい」

「タメだからぁ、敬語はナシねっ、ユヅキちゃん」

「あ、うん」

「じゃあ、宜しくの握手」


スッと手を差し出されてほんの一瞬躊躇したものの、あたしはその手を自分から握ってしまった。




こうしてこの日、人生初めての彼氏が…――――――できた。




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