あなたが欲しい



私たちを乗せたタクシーが不意に止まって、お金を払って私の手を引く剛典くんに、何も言えずについていくだけ。

一気に心拍数があがっているのを気づかれないように、至って冷静を装っているけど、もしかしたらバレているかもしれない。



…―――ちゃんとできるかな…


なんて不安は私の中から消えなくて…

でも、繋がれたこの手を離したいとはカケラも思えない。

剛典くんを好きだと認めた瞬間から…

気持ちを認めた瞬間からずっと…――――こうしたかったんだよ、私。


大人気なく剛典くんを独り占めしたくて…




「部屋、入って」



気づくともう、剛典くんが住んでいるんであろうマンションで。

…思った以上に大きいところに住んでる!

え、剛典くんってお坊ちゃん?

私でもこんなとこ住んでないんだけど…



「ナナさん?」

『えっ、あ…お邪魔します』



慌てて私が中に入ると、すぐに剛典くんもついてきて、ガチャンとドアが閉まると、当たり前に二人っきりの世界が広がった。


我慢していたの?ってくらい…

私を後ろから抱きしめる剛典くんにドキドキしている。

吐息が首筋にかかって、尋常じゃないくらいに、胸が膨れ上がった。




『剛典くん…』

「ナナ…」

『剛典…』

「ナナ…」




甘く優しく名前を呼ばれて、ゆっくりと振り向かさられた私を、その大きな瞳でジッと見つめる。

色っぽく唇が空いたと思ったら、すぐにその舌で唇を塞がれた。


同時に、腰に腕を回されて、抱き上げられてる?ってくらい強く引き寄せられた。

どうしようっ…―――

我慢できないのは、私の方かもしれない…




『剛典…今すぐあなたが欲しいよ私…』



口に出した言葉は少し震えていて…

緊張しているけどもう、私たちを止めるものなど何もなかった。





あなたが欲しい

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