年上の扱い方




外に出ると、マツさんとゆきみが二人で談笑していた。



手を繋いで出てきた私と剛典くんを見て、嬉しそうにゆきみが私に飛びついてきた。




「ビバ:ナナちゃん!!」




意味不明な単語を発しているけど、私をギュっと抱きしめるゆきみは嬉しそうで…




『ゆきみ〜…よくもぉ!!』

「えっ??何?何の話?」




とぼけて私から離れた。




『でもありがと!お陰で素直になれたよ、私』

「でしょう!?お陰で直人、バイトしてるよ」

『え、剛典くんの変わりに?』

「そうだよ!ってことで、わたしはマツさんと仲良く二人で飲み行ってくるね〜!!ばいばーい」

『…直人くんが怒るんじゃないの、マツさんと二人っきりなんて…』




ボソっと呟いた私に、剛典くんはニッコリ笑って「言わないでおくよ」そう続けた。


想えばゆきみがきっと直人くんに何かを言ったんだろうけど…―――




「直人がバイト変わるって…ナナさんと知らない男が二人で飲み屋に…って、ゆきみさんから聞いたって…。だからボク急いで…」

『ふふ、そうだったんだね。間違っても私、気のない人と二人っきりで飲みになんて行かないから安心して?』

「…不安。ナナさん綺麗だから…その気がなくても男が期待する生き物だよ…」




ふにゃ〜って子供みたいに笑顔を崩すふにがやっぱり可愛くて…もう一度髪に伸ばした腕を途中でパシンっと止められた。




「もう可愛いなんて言わせない…」

『…もう』

「子供扱いしないで…」

『余裕ないくせに?』

「あ、そーいうこと言うの?」

『だってそうでしょ?』

「…まぁ、そうか…はぁ〜…。もっと直人に聞いておけばよかったオレ…」

『え?なにを?』

「年上の扱いかた…」




しょぼんと肩を落とす剛典くんが本当に抱きしめたいくらい可愛くて…。



私の前で子供になっちゃう剛典くんが大好きで…―――



今度直人くんとゆきみと私と剛典くんの四人でご飯でもしようなんて計画が頭に浮かんだけど―――




「ナナ…タクシー乗って」




背中を押されてタクシーに乗り込んだ私の手をギュっと剛典くんが強く握りしめてきた。


なんかもう、余計なこと、考えられない…。



剛典くん、好きだよ…。





年上の扱い方

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