不意打ちキス




『待って待って!何か勘違いしてない?私ゆきみと一緒に飲みに…』



そう言うと私を引く剛典くんの腕がほんの少し弱まった。


剛典くんはそのままジッと私を見つめていて、少しの沈黙の後、ふう〜って息を吐き出したんだ。




「…直人があなたと男の人が二人で飲んでるって言うから…」




そう言った剛典くんは、真っ赤な顔で…。


私の『ゆきみと』って言葉に、はめられたんだって…理解したようで。


よく見ると、マツさんの荷物も、ゆきみの荷物までもがなくなっている。


どうやら本当にはめられたようで…。




『…やられたわね』

「うわオレ…すげぇ恥ずかしい…」




いつも大人に見える剛典くんも、やっぱりまだ子供なんだって可愛く見えてしまう。


同時に、私とマツさんがもしも二人で本当に飲んでいたとしたら、どうしたんだろう?って。


こうやって私をさらいに来てくれたのかな?って思うと、顔がカアーっと熱くなっていくのが分かった。




『あの剛典くん、腕…』




強く私の腕を握る剛典くんの熱い手を、本当は離して欲しくなんてないのに、この状況に耐えられそうもなくてそんな可愛げない言葉を言ってしまう。


この期に及んでお姉さん気取らなくてもいいのに、何となく年下の剛典くんと触れ合っている現実が恥ずかしいんだ。




「いやですか?ボク相手じゃ…」




でも、そうやって攻めてくれる剛典くんの愛情が嬉しくて…やっぱりゆきみの言う通り素直になってもいいんじゃないかって思えた。


この人になら、私の全てをさらけ出しても大丈夫なんじゃないかって。




『…いやじゃない』

「ほんと?」

『うん…』

「ナナさん」




ドキっとしたのは、思ったよりも傍で声がしたから。


俯き加減だった私のすぐ横から声がして…「やっぱ出よう…」そんな言葉が続いたから、思わず顔を上げた私を覗き込むように、剛典くんの顔が覆いかぶさったんだ――――――…



不意打ちキスって奴。


ドラマでよく見るけど…本当にこうやっていきなりキスする人なんていたんだ!なんて感心してる場合じゃない!!!


私の腰に腕を回して、その手をグイっと引き寄せる剛典くんに半分抱き上げられている私は、片足の先がついてるぐらいで、ほぼ剛典くんに持ち上げられている。


そんな状況ってだけでドキつくのに、躊躇なく入り込む舌に脳内真っ白になっていく…




『ンンッ…』



漏れた声に鼓動が早まった。




不意打ちキス

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