素直が一番
あの日、剛典くんに声をかけられてから私の心はいつだって剛典くんでいっぱいで。
その反面、どんどん好きになってしまう自分に知らないうちにブレーキをかけていた。
でも、それももう限界なのかも…。
『ゆきみは直人くんと結婚するの?』
「はは、そのうちね!」
『不安はないの?』
「直人がいない方が不安」
『大学に剛典くんのこと好きな子いっぱいいるよ』
「直人もいたよ、女の子家に泊まらせたこともあるし、わたし以外の子とホテルに行ったことも…。でもわたしが直人を好きなの、だから離れないって決めた」
真っ直ぐに私に視線と強い気持ちを送ってくるゆきみ。
見れば分かる。
どれだけの気持ちかなんて。
さっきの二人を見たらそれこそ本物だって…
『いいのかな、素直になっても…』
ボソっと呟いた私。
そう一言口に出しただけで、剛典くんへの想いが止まらくなってしまうようで…。
一人で悶々としていた時とじゃ状況が違う。
誰かに話すと、その想いは倍にもなってしまうものかと…。
何だか何だか、すごく剛典くんに逢いたい…
私を見てニッコリ笑うゆきみとマツさん。
「オレ煙草買ってくる」
そう言って席をたつマツさん。
ポンっとゆきみの頭を手で撫ぜると部屋を出て行った。
二人っきりになってドキっとした。
「素直が一番だよ、ナナちゃん」
『…ゆきみ…』
「逢いたくなっちゃった?岩田くんに!」
『な…別に…』
「はは、素直じゃないなぁ…あ、ごめん電話だ。ちょっと待っててね、ナナちゃん!…もしもし直人?」
慌ただしく出て行ってしまったゆきみ。
ポツンと一人になってしまって…『剛典くん…』半分無意識で呟いていた。
カクテルをゴクっと飲んでふう〜っと息を吐き出す。
もう剛典くんに逢うのは止めようって思っていた気持ちがスーッと消えていって…
この歳で笑われるかもしれないけど、剛典くんを信じてみようって…思うんだ。
恋に年齢は関係ないって、よく言うけど…―――気休め程度に思っておこうかなぁ〜なんて。
『剛典くん、逢いたいよ…』
「えっ!?ナナさん…」
『え…――なんで?』
マツさんかと思ったら、息を切らせた剛典くんがそこにいて…
「行きましょう!!」
いきなり腕を引っ張られて、飲み屋の個室から連れ出そうとするんだ。
素直が一番