思わぬ展開
「ナナ〜!ゆきみ〜!行くよ!!」
タイミング悪くマツさんの叫んだ声がして、途端にゆきみの横にいた直人くんの顔色が変わった。
ゆきみはアチャーって顔をしていて…
「ナナさんと二人じゃないの?」
「う、うん…」
「あの人って?」
「マツさん。ナナちゃんの担当の人で…」
「あのマツさんね」
「直人、今日は先約なの、だから…」
「分かってるよ、ちょっと逢いたくなっただけだから。部屋で待ってるね?」
「うん、いい子」
そう言ってゆきみが直人くんの髪を撫ぜると、嬉しそうに微笑んでそれからちょっとだけ強引に腕を引いてゆきみの頬にチュっとキスを落とした。
『わ!』
思わず声を出してしまった私に、ゆきみの恥ずかしそうな顔が飛んできて…。
でも直人くんは全然平気って顔で「じゃナナさん、ボクのゆきみをお願いしますね?」そんな挨拶。
『直人くんも一緒に行ってもいんじゃないの?』
「ダメよ、直人。家で待っててね?」
「うん、今日は顔見に来ただけだから。帰るね」
『いいのに、私は…』
それでも素直に帰っていく直人くんをちょっとだけ寂しそうに見つめるゆきみは、普段あまり見せない恋する顔で、それを少し可愛いと思った。
私もゆきみみたいに素直にそうやって剛典くんに言えるだろうか…。
直人くんを見送ってマツさんとゆきみと三人で飲み屋に入るなり、さっそくマツさんが私を見つめてニッコリ微笑んだ。
でも私はゆきみの話の方が聞きたくて…。
「で、ナナの相手はどんな奴?」
『…じつは、ゆきみと同じかも…』
そんな私の言葉にキョトンとした顔のゆきみ。
首を傾げてマツさんと顔を見合わせると、「え?同じ?」さっぱり分からないって顔で私に視線を送る。
小さく頷く私は、あの日剛典くんと出逢ったことを少しずつ二人に話し出したんだ。
ゆきみはまるで自分のことのように目をランランとさせていて…でも―――
「ねぇナナちゃんの相手って…岩田くん?」
『えっ!?』
「たぶんそのカフェ…――――うちの実家。ちなみに直人もあそこでバイトしてる…」
驚いたなんてもんじゃない!!
「マジで、ゆきみ?」
ゆきみの隣でマツさんだって驚いてる。
これは直人くんもいた方がよかったのか?なんて…。
思わぬ展開