大人っぽい
「そういや美月って何歳?」
「あたし86年生まれ」
「え、マジで?俺87年の3月…」
「あ、タメ!」
「おお、マジで?年下だと思ってた」
「えーそれって子供っぽいってこと?」
「ちげぇよ、若く見えるってこと!可愛いよ、美月は」
サラサラの髪を撫でるとまたリスみたいに歯を見せて笑った。
…可愛いとかサラっと言うなんて俺隆二化してねぇかな。
言葉にすることよりも、態度で気持ちを表現することのが多い俺がこんな風に言葉にするのはちょっとだけこっ恥ずかしい。
けどそれで美月が喜ぶならもっと言ってみたいな〜って単純に思うわけで。
「でもあたしも臣くん年上かな?って勝手に思ってたから…」
「…老けてる?俺!?」
自分で言ったんだけど、実際美月にそう言われると若干落ち込むんだけど。
「あ、違う。大人っぽいなって…何かすごいかっこいいから…」
フワっと風が吹いて。
大人っぽいとか、かっこいいとか、言われ慣れてはいるものの、気になっている女の口から言われるのはまた別格なんじゃねぇかって。
キュっと美月と繋がっている手を握ると自然と俺を見上げる美月。
「褒めてんの?」
「うん、褒めた」
「んじゃ有難く受け取っておくよ」
俺の言葉にニって笑う美月を少し引き寄せて、繋いだ手をジャケットのポケットの中に入れた。
駅までの道のりはすぐで。
改札口の前で手を離そうとした美月をそのまま反対の腕で背中を抱いてギュっと閉じ込めた。
「…臣くん…?」
「ん〜?」
「恥ずかしいよ…」
「なんで?誰も見てねぇよ」
何だろ。
マジで離したくないし、帰したくねぇな。
いつもだったら強引に連れて帰っちゃう所だろうけど、何でか美月相手にそれは通じない気がした。
もごもご腕ん中で言葉を発している美月を胸に埋めるようにキツク抱きしめると大人しくなった。
「マジで帰っちゃうの?」
耳元で聞くと、真っ赤な顔して答えたんだ。
「今日は帰る…」
今日は、ね…。
「分かった。んじゃ明日も店行くな」
ポンって背中を叩いてそっと美月離す。
コクって小さく頷くとスッと俺から離れる。
「ありがと、ばいばい」
名残惜しくも手を振って改札に入った美月の姿が見えなくなるまでその場で手を振り続けたなんて。
らしくねぇのに、心がほっこりしたんだ。