人柄
「あっち、終わったの?」
「あ、うん。今日はもう…」
「ふうん。んじゃ帰るの?」
「…うん」
顔の覗き込むとさり気なく目を逸らされて…。
「家まで送ろうか?俺車だし!」
「え、そんな…。いいです悪いし」
パタパタ手を振って否定してるけど、その顔には「送って欲しい」って書いてあるように見えるのは俺だけ?
だって、ここに来たのだって俺に逢いに来たわけでしょ?
デート誘われて嬉しかったって…―――
「んじゃ、駅まで送る。それならいい?」
「…うん」
照れたように顔を伏せるけど、美月の頬も緩んでいて。
「俺このまま帰るから後よろしく!」
バイトにそう告げると「え、5万はいいんっすか!?」目を大きく見開いてそう言われて。
ああ、すっかり忘れてたわ、5万。
「ん〜隆二に連絡しとくから今週中に来いって!」
「困った時の隆二さんっすね…」
「バーカ、俺達はそれでいいの!じゃあな!」
相変わらず緩い職場だな〜って思うけど、それが許されているのもお前の人柄だよ!って前に店長に言われたことがある。
色々俺を買ってくれている店長の下だからこうして自由な時間も取れるわけで。
そこには俺と店長との絆がある。
勿論俺も店長を尊敬しているし、慕っている。
できればずっとこの店で働いていたい。
「んじゃ行こう!」
スッと美月の手を取る。
あ、これ確認とるべき?
チラっと美月を見るとほんのり緩い口端。
いらねぇか!
隣で嬉しそうな美月を見て、俺まで嬉しくなる。
「臣くんって…」
「え?なに?」
「うまいね」
うまい?
え、なにが!?
キス…はまだしてないし。
ええ、なんだろ。
首を傾げる俺を見て美月は恥ずかしそうに笑った。
「手、あったかい」
キュって美月が強く握り返すから俺の心もキュっと鳴った気がした。