Sweet Honey | ナノ

女の扱い方

「臣くーん、いつ飲みに行ってくれんの?」

「えー!だって女怒っちゃうから…」

「うわ、臣くんのこと独り占めしてんのに、外出もさせないの!?…やめなよ、そんな女!」


ムウって唇を尖らせて服をたたんでいる俺について回るギャルな客。

もとい、アパレルで働く俺の大事なお客様。

チラっと視線をお客に合わせるとさも俺を食いたい…って顔に見えなくもなくて。

内心ゲロゲロって思ってることは顔に出すことなく、ポンポンって客の頭を叩く。

好きだよね、女ってこの頭ポンポン。

それぐらいは知ってる。

だからか、俺に触られた客はパアーって顔を明るくさせて俺の腕にギュっとくっつく。


「もう、臣くんズルイ。そうやって誤魔化すんだから!」


まぁ誤魔化してることに違いはねぇけど。

つーか離せって…

そんな願いを込めて客をジィっと見下ろすとカアーって赤くなってスッと離れた。

…可愛くないことないけど、化粧塗りすぎ。

それじゃスッピン見せたら彼氏引くんじゃねぇの?

そう思いながらも俺は近くにあった帽子を客に被せる。


「すげぇ似合ってるじゃんこれ!」


メンズ服だけど、小物は女でもOKだし、この子よく買ってくれるし。

ちょっと顔を近づけて覗き込む俺を、半口開けて見ている客はモロにフェロモン出しまくりで。

分かってるけど、気づかないフリ。

だってタイプじゃねぇもん!


「うん、やっぱ可愛いな帽子被ってる女の子。俺好き」


ここまで言えば絶対買ってくれる。


「じゃあこれ買う。臣くんに言われたら買うしかないじゃん」

「サンキュー。でもマジで似合ってて可愛いもんしか俺売らないから」


腰に手を回してレジ前に誘導する。

バイトがレジ前で待機してるけど、そいつを退かして俺がレジを売つ。

これも、喜ぶよね、女って。


「被ってく?タグ外そうか?」

「うん、被っていく」

「OK〜」


ポスっと被せてやると笑顔になる。

この笑顔は好きだな。

いつもそうやって笑ってりゃいいのにって正直思う。

モノ欲しそうな顔よりも笑顔のが断然奇麗。

だけど、この女も俺の彼女って位置に変わったら俺を信じてはくれないんだろうな〜…

そんなことを思うんだ。

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