Sweet Honey | ナノ

ダメな男

ダメだ。


わりと限界だ俺…。


美月の頬に顔をくっつけながら「なぁ…」甘く囁く。


くすぐったそうに身をよじりながらも「うん?」俺を見つめる美月。



「俺ん家行かない?」



女誘うのに、何でか緊張してる。


今までこんなドキドキしながら誘うことなんてなかったのに。


丸い目で俺を見つめあげる美月の髪を指でクルクル巻きながら美月の返事を待つけど…。



「臣…行ったらするの?」

「…え?」

「臣の家行ったら、する?」

「…うん、する」

「じゃあダメ。まだ行かないあたし」



…―――いらんこと言ったっけ俺。


キスもしてすげぇいい感じだって思ってたけど、そう思ってたのって俺だけ?


は、もしかしてすげぇ遊び人か、美月…



いや、そんなわけねぇだろ。


こんな中身が綺麗な女いねぇだろ。




「ゆきみさんと約束してる。家に行ったその日に手出そうとする男はダメだって…」



―――ゆきみ!!!

なんてこと言ってんだよ!!!



普段ならイラっとして「じゃあいいよ」って拗ねるところだけど、そうもいかなくて。


どうやっても俺、美月が欲しいみてぇ。



「臣とダメになりたくないから家は行かない」

「………」

「でもまだ離れたくない…」



俯き加減で言う美月がめちゃくちゃ可愛くて…


はぁこれ、マジで心臓もたねぇ。


俺ってこんなキャラだったっけ?




ふう〜っと大きく息を吐き出すと、俺は美月の小せぇ手をキュっと握った。





「分かった、しない。約束する。だから一緒に帰りたい…」



俺がそう言うと、嬉しそうに「うんっ!」笑って俺の手をギュっと握り返したんだ。



「臣、ありがとう!」

「…なんで?」

「だってあたしのことちゃんと考えてくれたんでしょ?」

「ああ、うん。美月のこと大事にしたいし」

「嬉しい…」

「あー俺途中で理性が吹っ飛びそうだったらぶっ叩いていいから。だからキスはいっぱいさせて?」




美月の唇を指でスッとなぞると、ビクっと肩を震わせる。


それから上目遣いで俺を見つめると「ん」白い歯を見せて笑った。




美月を車の助手席に乗せて俺はエンジンをかけた。


早く俺だけのもんにしたいけど、このもどかしさを堪能するのもいいかもしんねぇ…なんて前向きに思うことにした。

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